大乱闘！

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大乱闘！

　　　　ここでは『太平洋のかつぎ屋』での、小林旭さんと宍戸錠さんの乱闘の凄さをご紹介します。

◆ ◆ ◆

　　　　『太平洋のかつぎ屋』で小林旭さん扮するのは、日新航空（巻頭、一瞬出てくるスチュワーデス
　　　　役が松原智恵子さん。やはりカメラテスト？）のパイロット・立花哲次。しかし事故を起こし、
　　　　積荷をダメにしたため訴えられ、クビになります。宮崎にある航空大学校の恩師・品田恭太郎（
　　　　二本柳寛）の引きで、そこの講師になります。しかしそこでも空を飛ぶことが許されずに、東京
　　　　に戻り、怪しげな仕事も請け負う“かつぎ屋”と呼ばれる不良パイロットのたむろする“パシフ
　　　　ィック・ポーターズ”という運輸会社に雇われます。そこで元の同僚で、やはり事故で顔にケガ
　　　　を負い行方不明になっていた杉江洋介（宍戸錠）と再会します。杉江はパイロット仲間のジム・
　　　　ブラック（マイク・ダニーン。この作品が彼の演じた中では、最も大きくて最もイイ役では？…
　　　　この役者さんの作品全てを見たわけではありませんが）とで、闇の仕事を請け負っているのでし
　　　　た。ある時、それに気付いた立花は告発するのですが、ここで杉江と乱闘になります。この模様
　　　　を完全実況中継。

　　　　…まず、杉江が一発お見舞いすると、立花は吹っ飛んで、壁にブチ当たり（これだけでも素人で
　　　　は、かなり危険ですよ）、ズルズルと崩れ落ちます。立ち上がってきた立花に対して、杉江は二
　　　　回空振りしますが、再び杉江のパンチが当り、立花は階段のほうへ倒れます。立花に飛びかかる
　　　　杉江。二人は取っ組み合いながら階段を昇ります（降りるのならともかく、昇るんですよ、取っ
　　　　組み合いながら。笑。階段は六段上がると右へ曲がっています）。手摺りがグラグラするくらい
　　　　二人は暴れ、杉江、立花、杉江、立花、杉江の順でパンチを繰り出します。次に立花が一発殴る
　　　　と、その勢いで、杉江は六段分の高さから、一気に一階の床へ背中から落ちます（これも相当危
　　　　険だと思います）。その上へ立花がダイレクトに飛びかかって行きますが（アキラさん、豹みた
　　　　い。笑）、杉江が転げてそれを避けるので、立花は床へ直接落ちます（これも危険だ！。笑）。
　　　　今度は横のソファへ戦いの場は移って、杉江が一発、立花が四発殴ります。杉江は床へ立花を投
　　　　げて立ち上がり、杉江が一発、立花が四発、杉江が一発殴ります。そして椅子で杉江を殴る立花
　　　　。杉江が一発殴り、仕切りとなっているガラス製の壁（？）を蹴破ります（ニセのガラスとも思
　　　　えず、怖いです）。立花が二発、杉江も二発殴り、カウンターの上に乗ったりします。また椅子
　　　　を振り回す立花ですが、今度は杉江が素早く避け、椅子はカウンターに当ります。そこで電話の
　　　　ベルが鳴ります（乱闘の中、この電話は岡田真澄〔現・眞澄〕さん扮する、この事務所のマネー
　　　　ジャーが応対します）。立花が一発殴り、二人は電話のあるカウンターの上に乗り、立花が殴り
　　　　、その勢いで二人は窓を突き破って、外へ飛び出ます（少なくともここまでは長回しでワンカッ
　　　　トだと思います）。立花がもう一発殴り、車道との境にある冊を壊し、ダンプが横を走り抜ける
　　　　（これも危険）道路までも取っ組み合いを続けます。杉江が一発、立花が一発殴り、まだ立花は
　　　　杉江に飛びかかり、杉江が三発、立花が二発殴り…そこでやっと、マネージャーが出てきて（こ
　　　　の間、仲間の外人パイロットたちは、ただただ煽り立てるだけ）、沖縄が津波に襲われたので、
　　　　救援物資を届ける仕事が入ったと、二人を制止します。

　　　　…と、ここまでを一気に見せます。いやー凄い！。さすがは小林旭＆宍戸錠コンビです。殺陣師
　　　　の人はいるのでしょうが（？）、それにしても、ほとんど二人のフィーリングで行なっているの
　　　　ではないでしょうか？。あまりにも簡単にやってのけるので、凄いことをしているのだというこ
　　　　とにすら、気付かないくらいです。これが小林旭＆宍戸錠コンビの凄いところ。舞台で共演した
　　　　時は、確か、小林旭さんが降り下ろしたひしゃくでしたかが、宍戸錠さんの頭に当たってしまい
　　　　、頭が割れて、でも、血が流れつつも、最後までやり通したとかいうような話も聞きました。う
　　　　ーん…もしかしたら…二人はおバカ？（こら！）。しかしその後、二人とも他社作品に出演した
　　　　時には、「こんなスピード（アクションの動き）でイイの？」と思われたそうですよ。

◆

　　　　…小林旭さんは、難しく危険なアクションでも、それをいとも簡単にこなされるので、サラッと
　　　　流して見てしまいがちですが、よく見ると、とても運動神経がイイということが判りますね。“
　　　　渡り鳥”“流れ者”シリーズなどでも敵のアジトであるキャバレー（…なぜかキャバレーやバー
　　　　の経営者が悪玉。うーん）の丸テーブルにヒョイ！と飛び乗りますが、あれもよく考えてみてく
　　　　ださい、テーブルの足は真ん中に一本あるだけなんですよ。端のほうに乗ったらコケるはずです
　　　　が、いとも簡単に飛び乗って、その上で敵を蹴ったり、天井のシャンデリアにブラ下がって、二
　　　　階の回廊に飛び移ったりするんですから、本当に素晴しい運動神経だと思うのです。ジャッキー
　　　　・チェンなどが後年行なった生身のアクションというものを先取りしていると思います。走り出
　　　　した列車から飛び降りたり、ヘリコプターから下がった縄梯子に飛び移って、そのまま大空へ、
　　　　なんてこともチョイチョイっとやってしまうところが凄いのです。

◆

　　　　…ここで『太平洋のかつぎ屋』での粋なシーンも一つ解説。主人公が訪ねてきた恩師の娘・典子
　　　　（浅丘ルリ子）に、今の仕事が楽しいのかと聞かれます。

　　　　立花　「今の仕事が楽しいんだよ」
　　　　典子　「楽しい？…太平洋を飛べるから？」
　　　　立花　「そう」
　　　　典子　「じゃあ、なぜそんな暗い目をしてるの？」

　　　　…最後は沖縄へ向かう途中、嵐で遭難した杉江を救出に行き、主人公がそれを救出。もう一度、
　　　　航空会社に戻らないかと勧誘されるのですが、そのまま“パシフィック・ポーターズ”に残るこ
　　　　とになるというのが顛末です。話はズレますが、残念なことに、この作品以降、主演級に格上げ
　　　　された宍戸錠さんと小林旭さんとの共演は、しばらくおあずけになります。それが社の方針とは
　　　　言うものの、せめてこの後もコンスタントに、三作に一作くらいは共演作を作れば良かったので
　　　　は？というような気もします（結果論でしかありませんが）。

◆

　　　　…『太平洋のかつぎ屋』以外にも、日活映画には、大乱闘シーンは数々あります。

　　　　有名なところでは『俺は待ってるぜ』での石原裕次郎さんと二谷英明さんの乱闘。これは役柄設
　　　　定が元・ウェルター級とフェザー級のボクサーという設定ですから、凄い殴り合いなんですよね
　　　　。他にも石原裕次郎さんは『鷲と鷹』では三國連太郎さんと、『錆びたナイフ』では杉浦直樹さ
　　　　んと、『泣かせるぜ』では渡哲也さんと大乱闘を行ないます（もちろんその他の作品でも数々の
　　　　殴り合いのシーンはあります）。また、共演そのものが少ないのですが、石原裕次郎さんと宍戸
　　　　錠さんとの組み合わせでは、『夜霧の慕情』。これも「本当に殴り合っているんじゃないの？」
　　　　というくらいの凄い殴り合い（笑）。宍戸錠さんと渡哲也さんの組み合わせでは、『骨まで愛し
　　　　て』。北海道の牧場で殴り合いになりますが、これは、ハリウッド製の西部劇『大いなる西部』
　　　　のシーンを彷彿とさせる雄大な殴り合いが展開されます。

LAST UP DATE ◆ 2001年4月5日