危（やば）いことなら銭になる

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危（やば）いことなら銭になる

　　　　宍戸錠さんの主演作の中でもWeb＠作者が特に好きな作品をご紹介。ここではいつものヒロイン
　　　　像ではなく、早口でまくしたてる、男勝りで活発な浅丘ルリ子さんが可愛く、それだけでも一見
　　　　の価値はあります。作品そのものもアクションものとは言いながら、都筑道夫さんの原作がスマ
　　　　ートな笑いを含んでいて、楽しい作品に仕上がっています。

◆ ◆ ◆

　　　　宍戸錠さんの声。「師、曰（いわ）く、君子、危うきに近付かず。俺、曰く…」。続いて、主人
　　　　公たちの合唱（？）で「危（やば）いことなら銭になる！」。真っ黒な背景に、お札が降ってく
　　　　るタイトルバック。三宅光子さん歌う主題歌“危いことなら銭になる”が流れます。

　　　　♪誰が　あなたを　殺すのかしら
　　　　　にぎやかな　その街角で
　　　　　冷たいナイフの　一突きで
　　　　　ある晴れた秋の朝
　　　　　誰が　あなたを　殺すのかしら
　　　　　「危いことなら銭になる！」（やはり複数の声で）
　　　　　誰が　あたしを　殺すのかしら
　　　　　暖かい　この（寝台で〔ここ、ちょっと聞き取りにくく、？？？です〕）
　　　　　首に回した　強い手で
　　　　　ある雨の秋の夜
　　　　　誰があたしを殺すのかしら
　　　　　（注／作品を見て書きましたので、文字の表記に違いがあるかもしれません）

　　　　紙幣用のミツマタ用紙を運搬する中田運送のワゴン車が、突然現われた大型トレーラーに前方を
　　　　阻まれ、後ろからやってきた車に挟み撃ちに遭う。ワゴン車の運転手・木島〔ゴロウ〕（野村隆
　　　　）と武井〔ハジメ〕（大路達三）はあっさり男たちに刺殺されてしまい（腹からズブズブと血が
　　　　噴き出し、不気味）、ミツマタ用紙はワゴン車ごと奪われてしまう。ワゴン車を廃車置き場（？
　　　　）に持ち込んだ男たちは、ナンバープレートを替えたり、車体を凹ませたり傷つけたりして偽装
　　　　する。

　　　　…トルコ風呂（※現・ソープランド）でミス・トルコ（北出桂子）のサービスを受けていた“ガ
　　　　ラスのジョー”こと近藤錠次（宍戸錠）は事件の報を聞き、慌てて店を出て行く。同じくボクシ
　　　　ングジムでその報を聞いた“ダンプの健”こと芹沢（ただし彼の愛車であるダンプには“大久保
　　　　砂利店”という名前がありますが…？）健（草薙幸二郎）も慌てて行動を起こす。その頃、“計
　　　　算尺の哲”こと沖田哲三（長門裕之）は拳銃の絵柄の入ったトランプで三人の男たち（小柴隆・
　　　　瀬山孝司・八代康二）とポーカーを行ない、スペードのローヤルストレートフラッシュで勝った
　　　　ところで、勝ち逃げをする。彼が常備している計算尺という器具によると、この後、ツキが落ち
　　　　ていくという計算がはじき出されたらしい。窓から見える向かいのビルの電光掲示板で、十億八
　　　　千万円分のスカシ入りミツマタ和紙が盗まれたという事件を知る。慌てて自分が編集をしている
　　　　非売品の雑誌《週刊犯罪》（笑。裏表紙には彼が使っている“ヘンミ計算尺”の広告が！）のバ
　　　　ックナンバーで、紙幣の贋作名人・坂本雅章〔がしょう〕（左卜全）のことを調べる。その頃、
　　　　坂本名人の家では、妻（武智豊子〔後に武知杜代子〕）が電話の応対に忙しく、夫の坂本名人は
　　　　香港へ行っていて、二日後に帰ってくることを告げている。

　　　　…空港。坂本名人を迎えに行く“計算尺”は、そこでジョーと出会う。

　　　　ジョー「よー、“計算尺”」
　　　　計算尺「ジョーさんにお目にかかれるとは嬉しいですね。やはり、何ですか、坂本名人のお出迎
　　　　　　　　えで？」
　　　　ジョー「それは確率とかいうやつで？」
　　　　計算尺「その通り。僕は数字しか信用しないことに…」
　　　　ジョー「アー、聞き飽きたよ、そのセリフは」

　　　　二人とも紙を盗んだ何者かに坂本名人を紹介して稼ごうというわけなのだ。そこへ“ダンプの健
　　　　”も首を突っ込んでくる。しかし三人で儲けを分けたのでは、間尺に合わないという計算をする
　　　　“計算尺”。ジョーは組まないと言う。そこで“計算尺”は、あることを試させてほしいと言い
　　　　出す。それはジョーが“ガラスのジョー”と噂されているように、本当にガラスを引っかく音を
　　　　聴くといつどこであってもその場から逃げ出すのかどうかということ。売店のガラスケースをコ
　　　　インで引っかくと、ジョーは本当に逃げてしまう（笑）。待合い室には坂本名人の妻がいて、ジ
　　　　ョーは孫だと偽って近付く。しかし周りには紙を盗んだ組織の男たちが。“計算尺”が空港職員
　　　　に化けて、通用口から坂本名人を連れ去ろうとするが、空港の係員（露木護）から通用口のこと
　　　　を聞いたジョーたちに追い付かれてしまう。しかし、組織の男たちが銃で脅して、坂本名人を連
　　　　れ去ってしまう。面白いのは、坂本名人の妻がなぜか妙に銃に詳しいこと。組織の男の一人が持
　　　　つ拳銃を見て、「あ！、あんた珍しいガンを持ってるじゃないか。これは確かロシアのトカレフ
　　　　！」（笑）。03年の映画、「ジョゼと虎と魚たち」フィルムパートナーズ『ジョゼと虎と魚た
　　　　ち』で池脇千鶴さん扮するヒロインが、怪しい雑誌を見ながら護身用に欲しいという理由から、
　　　　「このトカレフ言うんわ、買えんのか？」と大阪弁で妻夫木聡くん扮する主人公に聞く、あの銃
　　　　です。

◆

　　　　…中華街。二人乗りの珍車・赤いメッサーシュミット（空港から去る時もこれに乗っている）で
　　　　乗り付けるジョー。怪しげなビルへ行き、入り口の男と、やはり銃の絵柄のトランプで何やら暗
　　　　号のやり取りみたいな儀式を行ない、中へ通される。そこは“政やん”（井上昭文）と自称する
　　　　男の銃の密売場。外国人など、大勢の客がいて、試し撃ちなども行なわれている。どんな銃でも
　　　　あると豪語する政やんだが、ジョーのお目当ての品はない。

　　　　政やん「じゃあ、言ってみなよ。ええ？、どんなガンを探してるんだか」
　　　　ジョー「（その銃の絵柄の描かれたトランプを出しながら）…製造元はソビエト・ロシア、8連
　　　　　　　　発、口径7.62、名称はトカレフ・オートマチック！」

　　　　政やんは、出元が出元だけに手に入りにくい珍しい銃だが、少し前に入荷して、すぐに買い手が
　　　　付いたと話す（日本では初めての一丁じゃないかということ）。しかし、商売上の掟で、買い手
　　　　の名前は明かせないのは承知の上だろうという。

　　　　ジョー「あんた、確かポーランドのラドムM30が欲しいって言ってたっけなぁ？」
　　　　政やん「ラドムM30？。ありゃあ、寝ては夢、起きてはうつつ、幻の（と、ジョーがその銃を
　　　　　　　　出すのを見て）…あ！、ラドム！」
　　　　ジョー「（渡すのは）ヤダよ！」
　　　　政やん「そんな殺生な…」

　　　　結局、政やんはその銃欲しさに、トカレフの買い手の名前を話してしまう。“ポーカーフェイス
　　　　の秀 ”（平田大三郎）という男で、バー“ピンキイ”で見かける顔だという。

　　　　…“ピンキイ”の表の電話ボックスに入る秀を見つけたジョーは、彼が回す電話のダイヤルの間
　　　　隔を腕時計で計り、番号を確認、その番号へかけてみる（ここでなぜだかバックに流れているの
　　　　　は、植木等さん歌う“ハイそれまでョ”）。女性が出るが、嘘の話をして、相手側の名前や住
　　　　所までをうまく聞き出す。宝町一丁目の平和ビルの中の共栄商会という会社らしい。

◆

　　　　…翌日。メッサーシュミットで平和ビルへ出かけるジョー。“共栄商会”と書かれたドアをノッ
　　　　クする。

　　　　女　　「アントレ（“どうぞ”というフランス語？）」
　　　　ジョー「？？？」

　　　　共栄商会とは名ばかりで、机の前で焼き芋をかじりながら女の子が電話番をしているだけ。

　　　　女　　「鉛筆、石鹸、ゴム紐、みんな間に合ってるわ」
　　　　ジョー「お嬢さん、おいくつ？」
　　　　女　　「素肌の美しさを威張れる年頃よ。だから化粧品もノーサンキュー」
　　　　ジョー「親の顔が見たいね、全く」
　　　　女　　「まぁ無理ね。二人ともお墓の下だから」
　　　　ジョー「じゃあ、男を見たら、押し売りと思え、なんて、誰に教わったの？」
　　　　女　　「あら、あなた、押し売りじゃないの？」
　　　　ジョー「いや、ま、一種の押し売りだがね。相手は君じゃない。君のボスさ」

　　　　そこへかかってきた電話を彼女より先に取るジョー。相手はボスらしい。ジョーはボスに自分を
　　　　売り込んで、用心棒にするように言う（その電話の間、女はジョーを叩いたり、机に上げた両足
　　　　を突き落としたりする）。しかしボスは断り、その電話番の娘・秋山とも子（浅丘ルリ子）もク
　　　　ビだと言い渡す。

　　　　ジョー「（受話器を置いて）…今日限り、君はクビだそうだ」
　　　　とも子「何ですって！？。あんたのおかげ（こういう場合は“あんたのせい”が正しいのでは？
　　　　　　　　）だわ。あんたが来て、あんなわけの判んないこと、電話でしゃべんなきゃ…」
　　　　ジョー「そんな興奮してオッパイを震わすと、ブラジャーの紐が切れるよ」
　　　　とも子「ご心配にはおよびません。そんなものしてませんよ！」

　　　　と言いながら、椅子に座ろうとしてハデにひっくり返るとも子。ガーターベルトや白いパンティ
　　　　ーが丸見えになってしまう（浅丘ルリ子さんがやることかー？…でも物凄いファンサービスでは
　　　　ありますね。笑）。

　　　　ジョー「がっかりしたよ。パンティーも付けない主義かと思って、一瞬、目を見張ったんだけど
　　　　　　　　ね」

　　　　とも子が貯金している理由を聞くが、その途端、ジョーは投げ飛ばされてしまう。柔道二段、合
　　　　気道三段だというとも子。城南大学でフランス語も学び、フランスで道場を開くためだと聞き、
　　　　ジョーは怖れをなす（笑）。とにかく失職したのはジョーのせいだと言い張るとも子は、ボスの
　　　　居所を探し、退職金を手に入れるつもり。平和ビルの管理人の長井（山田禅二。“長江”とも聞
　　　　こえますが）に部屋の契約者の名前と居所を聞き出し（実は長井はボスの仲間なのだが…）、暗
　　　　くなってきたが、メッサーシュミット（縦列で二人乗り）で目的地へ向かうジョーととも子。

　　　　ジョー「くれぐれも言っとくがね、俺は君を相棒となんか思っちゃいないんだぜ。したがって、
　　　　　　　　これから行く先でどんなことが起こっても、君の命の保証まではいたしかねるからね」
　　　　とも子「柔道二段、合気道三段！」
　　　　ジョー「ウエー。いいか、途中でもし別れ別れになったら、新宿二丁目のジャズ喫茶“KOOL”
　　　　　　　　で会おう」
　　　　とも子「OK、了解」

　　　　…その頃、“ダンプ”は悪玉たちの子分の一人で兄貴分格の紺野（野呂圭介）を捕まえ、ダンプ
　　　　の荷台でペシャンコにしてやると脅し、悪玉たちのアジトで坂本名人の監禁場所であるキャバレ
　　　　ー“アカプルコ”のことを吐かせることに成功する。そして紺野を連れてダンプで出発、ジョー
　　　　たちのメッサーシュミットを追い抜いていく。

◆

　　　　…目的のキャバレー“アカプルコ”。すでにジョーが来るのを待ち受けている組織のボス・土方
　　　　〔・ジュウスケ〕（浜田寅彦）や秀、“ビッグの修”（郷エイ治）、“ノッポ”（榎木兵衛）、
　　　　“クロちゃん”（黒田剛）などの子分たち（中尾彬さん扮する若僧の子分もいる）。“ダンプ”
　　　　は紺野を捕まえ、大型拳銃コルト・パイソン357マグナムで脅して、“アカプルコ”の店先に
　　　　ダンプを停め、店内へ入っていく。その直後にジョーととも子が到着。とも子が鼻歌（主題歌）
　　　　を歌いながら、ダンプに近付いて行き、見張りの子分どもの隙を見て、こっそり運転席に乗り込
　　　　み、バックのまま、店の入り口に突っ込む！。その騒ぎに乗じて店の裏口からジョーととも子は
　　　　忍び込むことに。ジョーはとも子に表で待っているようにジェスチャーで告げるが、とも子が武
　　　　道のかまえをするので、仕方なく同行させる（笑）。見張りをしていた“ナキボクロ”（玉村駿
　　　　太郎）をやっつけて（ジョーととも子が交代で殴る。笑）、坂本名人を連れ出す。しかしメッサ
　　　　ーシュミットは二人乗りなので、とも子は置き去りにされ、ダンプが巻き散らして逃げた砂利で
　　　　滑って転び、怒る。ボスは坂本名人が連れ去られたことに気付き、作業部屋へ行くと、ジョーの
　　　　書き置きが。壁に“上を見ろ↑”。すると何とその作業部屋はキャバレーのステージの真下で、
　　　　しかも踊り子たちの姿をマジックミラーで見上げているのだ（坂本名人もこれが気に入っていた
　　　　わけで。笑）。そこには“いまからでもおそくないジョー”と書かれている。

　　　　…ジョーが平和ビルに坂本名人を連れ帰ると、その表で“計算尺”と坂本名人の妻が待っている
　　　　。計算通り、ジョーを尾行していたらしい。“計算尺”は二枚の小さなガラス板を出して、こす
　　　　り合わせるので、逃げて行くジョー。

　　　　…とも子が部屋に戻ってくる。ジョーがいて、坂本名人が“計算尺”に連れ去られたことを聞い
　　　　てガッカリ。自宅も見張られているであろうジョーは、五百円で泊めてもらうことに（笑）。と
　　　　も子は寝袋で寝るという。寝付きの早いとも子は、灯りを消した途端、ジョーが話しかけても、
　　　　食べ物の寝言を言う始末（本当に浅丘ルリ子さんの演じる役なのかー？。笑）。

◆

　　　　翌日、再び“アカプルコ”へ出向くジョーととも子。二人は十分後ということを確認して時計を
　　　　合わせる。ジョーは店へ、とも子は電話会社の工事人のような扮装をして、やはり主題歌を鼻歌
　　　　で歌いながら、電柱に登り出す（この電柱にも“ヘンミ計算尺”の看板が出ています。また浅丘
　　　　ルリ子さん本人がヒョイヒョイと登っていきます。意外にもアクション女優？。笑）。ボスと取
　　　　り引きの話をしていると、そこへ電話が。ジョーは少し早すぎる（とも子からにしては）と思う
　　　　のだが、それは“計算尺”からの電話。その電話でジョーが坂本名人の身柄を確保してはいない
　　　　ことがバレて、銃を持った子分どもに囲まれてしまう。しかし、ジョーは懐からマイクらしきも
　　　　のを出し、今までの会話は全て録音してあり、その仲間は今、警察のそばにいると脅す。マイク
　　　　に向かって、電話をしてくれ、と話すジョー。打ち合わせ通り、電柱にいるとも子から（電話線
　　　　を操作したんでしょうね）、十分後きっかりにベルが鳴り、ボスが電話に出る。とも子は、今、
　　　　伊勢崎警察署の前にいると嘘を付く。ジョーの言い分を信じたボスは笑い出す。子分どもも笑い
　　　　出す。ジョーも笑いながら、去っていく。最後まで笑っていた紺野はボスに灰皿（？）を投げつ
　　　　けられる（笑）。

　　　　…“計算尺”は何と警視庁の建物の中で、坂本夫妻をボスに引き渡すと言っていたので、ジョー
　　　　はチキンラーメンの宣伝カー（広告なんでしょうけど、なぜ唐突にこの車が出てくるんでしょう
　　　　？。笑）で警視庁に乗り付け、精神病院から狂暴な老夫婦が逃げ出したと録音テープの声をスピ
　　　　ーカーから流すので、警視庁は大騒ぎになり、悪玉たちは逃げ去ってしまう。ちょっとやりすぎ
　　　　たか、と、その様子を階上から見るジョー。

　　　　…銭湯（？）から戻ったとも子（やはり主題歌の鼻歌を歌いながら）は、長井の電話の内容から
　　　　ボスの仲間であることを知ってしまう。どうやら奪った紙の状態を確かめに行くらしい。車置き
　　　　場にやってきた長井と、やはり土方の子分である“チビ”（光沢〔後に光〕でんすけ）は、外装
　　　　も錆びてしまったワゴン車に積んである紙を確認する。しかし“チビ”と長井は、とも子に棒で
　　　　殴られ、倒れてしまう（笑）。

　　　　…坂本名人の家に集まってくるジョーと“計算尺”、“ダンプ”。家へ入ると、坂本名人の妻が
　　　　倒れていて驚く三人。そこへ笑いながら出てくる坂本名人。何と夫婦で西部劇ごっこをしていた
　　　　というのだ（笑）。ガンスピンまでしてみせる妻（武智豊子（後に武知杜代子〕さんが本当に結
　　　　構うまい技を見せます。練習したんでしょうね）。そこへボスや子分たちもやってくる。聖徳太
　　　　子のヒゲの部分だけが未完成なのでそれを彫れというのだ。しかしそこへ紙が盗まれたという連
　　　　絡がボスたちの車の無線に入る。それがとも子の仕業だと知ると、ジョーは“KOOL”へ電話を
　　　　入れる。とも子が出て、紙はちゃんと保管してあるという。

◆

　　　　…ワゴン車は何と交番の横に置いてあり、とも子が運転して平和ビルまで運ぶという。オンボロ
　　　　のワゴン車は時速20kmしか出ず、ジョーらを乗せた秀の車は、ワゴン車の後をノロノロ着い
　　　　ていく。とも子が急停車して猫を助けたり、大通りの交差点の真ん中でエンジンが煙を上げたり
　　　　、なかなか進まない。その様子を逐一無線で聞いてイライラするボス。トヨストーブを運ぶトラ
　　　　ックの運転助手（晴海勇三）にからかわれたとも子は、彼と決闘まで始める。柔道五段だという
　　　　相手だが、とも子はついにはこの男を噴水の中に突き落として、勝ってしまう。やがて平和ビル
　　　　に到着するが、そこでとも子たちはホールドアップとなる。

　　　　…管理人室で、ニセ札は香港の王（ワン）という男に売るという話をする土方。

　　　　ジョー「トボケちゃいけないよ。あんたら、俺たち四人を消そうって魂胆だろ？」
　　　　ボス　「ほー？」
　　　　ジョー「ニセ札のさばき口ってのは、あんたたちにとっちゃ大切な秘密だろ？。それをいとも簡
　　　　　　　　単に打ち明けたんだ。つまり俺たち四人を生きて帰すつもりはない、と、睨んでも、不
　　　　　　　　思議はなかろうじゃないか。な？」
　　　　計算尺「な！」
　　　　ダンプ「な！」
　　　　とも子「な！」（笑）

　　　　隙をついて敵の銃を奪うジョーたちだが、“計算尺”の計算通りには行かず、再び形勢は逆転、
　　　　ジョーたちは行進させられ、鉄の扉で囲まれた部屋に連れて行かれる。この部屋の下では、ニセ
　　　　札の印刷が始まったらしい音がしている。

　　　　秀　　「ぜんたーい、止まれ！。右向け、右！。番号！」
　　　　計算尺「1！」
　　　　ジョー「2！」
　　　　ダンプ「3！」
　　　　とも子「4！」
　　　　計算尺「異常なし！」
　　　　秀　　「この野郎！（…と“計算尺”をコヅく）」

　　　　ジョーが部屋ごと水攻めにされるのかとか（“計算尺”は自分の腕時計は防水だからイイと言う
　　　　。笑）、“ダンプ”は飢え死にさせられるのかなどと言うので、とも子が、

　　　　とも子「こうなると判ってたら、天ぷらそばとお寿司食べて、インスタントじゃないコーヒー、
　　　　　　　　飲んどくんだったな。おなか減らして幽霊になるなんて、全然イカさないもんね」

　　　　しかしボスは手っ取り早く始末するという。ドアの鍵穴からガスを入れると言い、子分たちに四
　　　　人をロープで縛らせて床に転がらせる。ボスは部屋を出ていく時に、扉のそばにある白くて丸い
　　　　装置（？）をなでていく。

◆

　　　　…何とか脱出の方法を考える四人。何と、とも子のGパンの尻のポケットにはナイフがあるとい
　　　　う。ジョーが“ダンプ”の上を転がってとも子の横に行き、とも子に叱られながらも、お尻のポ
　　　　ケットをさぐる（「あ～ん、そこそこ」というようなギャグもある。やはりイイのか？、浅丘ル
　　　　リ子さんなのに。笑）。“ダンプ”は足の指でガスが入ってくるドアの鍵穴を塞ぐ。ガスの匂い
　　　　は消えたが、“ダンプ”の足の匂いが臭いという“計算尺”。ナイフでロープを切り、自由にな
　　　　った四人。しかしベビーナイフ以外に武器がなくては戦えない。そこで“計算尺”が、

　　　　計算尺「えー、しょうがないなー。そいじゃ、小生の秘密を一つ公開するかな。いや、レディの
　　　　　　　　前では失礼なんですがね」

　　　　と言いながら、ズボンを脱ぎ始める。彼はこれまで松葉杖のようなものをついていたのだが、実
　　　　は不自由だと思われたほうの片足には、何やら多くの部品が巻き付けてあるのだった。それと杖
　　　　を組み立て始める。

　　　　計算尺「ね、これがこう来ちゃって、細工は隆々、危いことなら銭になる、って…」
　　　　ダンプ「おい、それは…」
　　　　計算尺「そう、こうするとね、オートマチックライフルが一丁出来上がりってわけだ。凄く金を
　　　　　　　　かけて作らしたんだがねー、使うのは今日が初めてなんだ」
　　　　ジョー「トボケた旦那だねー」

　　　　息を止めて、ジョーが鍵穴を細工して鍵を外す。そこでとも子の提案でエレベーターに乗り込む
　　　　ことにする四人。エレベーターを動かしてはバレるので、天板を開けて、エレベーターの上に乗
　　　　る。ワイヤーを登ろうとするが、上のほうの扉が開いて銃撃される。天板を開けると下にも敵が
　　　　。何と、先般、ボスがなでていた白い装置は盗聴マイクだったのだ！。しかし“計算尺”の銃で
　　　　上の数人を撃って落とし、銃を奪う。エレベーターが上がり始める。そこで天板を開けて、下の
　　　　二人をナイフと銃で殺し、再びエレベーターの中へ。全ての銃の弾丸を数えると計28発。

　　　　ジョー「やり方とチームワーク次第によっちゃ、地獄行きは、まぬがれるかもしれないぜ」

　　　　逆襲してやろうと言うジョーに、“計算尺”は、確率は80％だと言う。

　　　　ジョー「成功率？」
　　　　計算尺「失敗率」
　　　　ジョー「あー…」
　　　　ダンプ「かまわねぇ。やらかせ！、一か八か！」
　　　　計算尺「“ダンプ”！」
　　　　ダンプ「文句あっか？」
　　　　計算尺「ノー！」
　　　　四人　「よーし！（と、四人で手を合わせる）」

　　　　敵の待ち受ける四階へエレベーターを向かわせる。ドアが開いた瞬間、敵の死体を盾に撃ちまく
　　　　るジョーと“計算尺”、“ダンプ”。大銃撃戦が終わる…シーン（笑）。ボスを含め、あっけな
　　　　く敵を全滅させてしまったようだ。エレベーターの上からしたたり落ちる血に気付いて、上を見
　　　　上げたとも子は、凄惨な死体を見て、ゲロゲロ（笑）。そこで事務所の電話が鳴る。出ないとマ
　　　　ズいだろうということで受話器を取ると、その相手はどうやら取り引き相手の王（受話器から聞
　　　　こえるのは、明らかに藤村有弘さんの怪しいイントネーションの日本語！。笑）。埋め立て地で
　　　　取り引きをするということになる。

◆

　　　　…階下では、坂本夫妻がニセ札を印刷していた。喜ぶジョーたちだが（ここで、坂本夫婦が、悪
　　　　玉たちのことを聞くので、思い出したとも子はまたゲロゲロ。笑）、坂本名人は、ジョーたちが
　　　　手に入れるとは思っていなかったので、いたずらをしてしまったという。何と札を斜めにして見
　　　　ると、聖徳太子のヒゲの形が変わるのだ！（ダッコちゃんの目がウィンクするのと同じ原理だと
　　　　いうのだが、印刷でそんなこと出来るのかな？。笑）。ガッカリする四人。だがジョーはもう少
　　　　しそこに残るという。センチメンタリズムだと言うので、“ダンプ”が、

　　　　ダンプ「嘘を付け！。おまえがセンチになるくらいなら、ゴジラが涙をこぼさぁ」

　　　　またもやガラス板で脅されるジョーは、魂胆を白状する。つまり、そのままニセ札とドル紙幣を
　　　　交換してしまおうというのだ。札束の一番上だけ、本物の紙幣を置こうというが、何しろ十億八
　　　　千万円分である（しかも当時は聖徳太子が描かれているとは言うものの、千円札）。そこで、ト
　　　　ランクに入れた一番上の段の分だけ、本物の紙幣を乗せておいて、全部の札束を調べる時間を与
　　　　えない方法を考えることにする。

　　　　…埋め立て地の遠景。画面の左右から白い矢印が中心に向かって動いていく（そこにジョーたち
　　　　と王たちグループがいるのだ！。笑）。それぞれ、トランクを六個ずつ交換して、札束を調べ始
　　　　める。王が二段目を調べようとしたあたりで、ジョーがとも子に合図を出す。そこでとも子はサ
　　　　イレンを鳴らそうとするが、ちょっとハンドルが硬くて回らなくて焦る。しかし、サイレンは鳴
　　　　り、「警察だ！？」ということで、双方のグループはトランクを持って、左右に逃げる。そこへ
　　　　本物の警官隊がやって来る！。ジョーたちは、王たちがまんまと騙されたと言いつつ、逃げる（
　　　　まだサイレンを回そうとするとも子も引き連れて）。王たちも何かわめきながら逃げる。

◆

　　　　…坂本夫妻の家で祝杯を上げるジョーたち。坂本名人は自分の手による作品（芸術）が認められ
　　　　役に立ったことが嬉しいと満足気で上機嫌である。そこで、ドル札を一枚見せてほしいと言う。
　　　　外国のものや新しいもの、珍しいものが大好きな夫婦なのだ。一枚と言わず百枚でも何枚でも、
　　　　と、ジョーはドル札を坂本名人に渡す。そのドル札をしげしげと眺めていた坂本名人は、大笑い
　　　　を始める。何とこのドル紙幣は、坂本名人が香港へ行った時に作ったニセ札だと言うのだ！（す
　　　　ると王一味も、「やーいやーい、騙されやがって！」などと中国語で言いながら、逃げたに違い
　　　　ない。笑）。ジョーに札を斜めから見てみろと言う坂本名人。覗き込む“計算尺”と“ダンプ”
　　　　、とも子たち。「あ！」…何と紙幣のジョージ・ワシントンの肖像が、例の聖徳太子と同じよう
　　　　に、斜めにして見ると、赤い舌をペロリと出すのだ！。その画面に「はっはっはっはっ…」とい
　　　　う女性の笑い声がかぶさり、頼りない声で、「危いことなら銭になる…」。すると、「NO！」
　　　　という声（ジョージ・ワシントンの声なのか？）。終。

◆ ◆ ◆

　　　　…錠さんをブン投げたり、決闘したり、アクティブな浅丘ルリ子さんの活躍が楽しいのです。ま
　　　　た“計算尺”に扮した長門裕之さんのスマートな演技が作品を押し上げていますし、草薙幸二郎
　　　　さんが善玉（人物そのものは悪人ではあるけれど。笑）なのも面白い。そして藤村有弘さんは、
　　　　日本語のセリフは電話の声くらいしかないのではないかという贅沢な出演形式で、なかなか洒落
　　　　た味わいの作品です。未見の方には、ぜひオススメ！。

LAST UP DATE ◆ 2007年5月5日