幻の日活映画、その他（～1959年）

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幻の日活映画、その他（～1959年）

　　　　このコーナーはNOBOさんやkeiさん、サム・スペードさん、しょうちゃん、ちゃんゆうさんな
　　　　ど、日活映画ファンの皆様にご提供いただいた日活の広報冊子（？）《日活映画》誌面などに掲
　　　　載されている予定作品の告知や、由美子さんやツカさんにご提供いただいた新聞の縮刷版調査の
　　　　内容を中心に、特に幻の作品（実際には制作されなかった作品、タイトルや出演者が変更になっ
　　　　た作品など）を紹介します。石原裕次郎さん主演の『赤い波止場』も元々は『口笛の聞〔きこ〕
　　　　える港町』というタイトルになる予定だったそうですし（台本の表紙もそうなっていた）、一本
　　　　の作品が出来上がるまでには、いろいろと紆余曲折があるものなのですね。吉永小百合さんは『
　　　　あゝ野麦峠』の企画を持ち込んでおられたみたいですし、後々の小林旭さん製作の映画『春来る
　　　　鬼』も日活時代にご自身が演じるつもりだったようですね。

◆

　　　　●昭和31年8月号…
　　　　「『灰色の教室』　“太陽の季節”“狂った果実”につづいて、悠々好調の波に乗る石原慎太郎
　　　　　の第三弾です。再び学生の赤裸々な群像の生態を描いて、皆さまを魅了するこの作品は、大い
　　　　　に期待されるものがあります」
　　　　★太陽族ブームがあっさり去ってしまったので、製作されなかったのでしょうね。

◆

　　　　●昭和31年9月号…
　　　　「北原三枝　マコちゃん宿望の『娘と私』（獅子文六・作）の映画化が決定、大変なハリキリよ
　　　　　うです」
　　　　★結局、映画化はされなかったようです。

　　　　「回天作戦の戦記映画　原爆を運ぶ重巡洋艦インディアナポリスを撃沈した潜水艦と人間魚雷回
　　　　　天の活躍を描く『潜水艦イ58号帰投せり』を映画化する」
　　　　★三國連太郎さんも出演予定だったらしいこの作品、結局は、『人間魚雷出撃す』として製作さ
　　　　　れています。

◆

　　　　●昭和31年11月号…
　　　　「新珠三千代　入射当時より出演を希望していた『乳母車』を撮り終えると、お正月映画『踊る
　　　　　太陽』で歌と踊りを楽しみ、続いて『赤い太陽』（『廓』改題」）に出演の予定」
　　　　★結局、『無法一代』と改題されて製作されました。

　　　　★また予告のページには、『孤独の人』の出演者として、月丘夢路さんと津川雅彦さんの他に、
　　　　　石原裕次郎さんの名前が書かれてあります。青山恭二さんの役なのでしょうか？。あるいは小
　　　　　林旭さんの役？。

◆

　　　　●昭和32年新春号…
　　　　「異色作三本　（前略）～日活特殊技術部が腕をふるう空想科学映画『怪人ラプラスの襲撃』が
　　　　　色彩（カラー作品？）で準備中」
　　　　★どんな作品だったのでしょうね。日活の特撮映画は、後の『大巨獣ガッパ』だけですが、特撮
　　　　　には定評があります。作っておいてほしかったですね（笑）。

◆

　　　　●昭和32年1月号…
　　　　「『お笑い次郎長伝・灰神楽三太郎』　（原案・正岡容、監督・冬島泰三、主演・石原裕次郎、
　　　　　フランキー・堺、相模太郎、美多川光子）」
　　　　★『幕末太陽伝』も併せて予告されていますので、この作品が『幕末太陽伝』となったわけでは
　　　　　ないようです。

　　　　「『哀愁の園』続編制作　大林清原作、文化放送連続ドラマの映画化『哀愁の園』は、全国的に
　　　　　好評を博し、ファンの皆様から続篇の要望が強いので近く前作と同様に南田洋子、葉山良二、
　　　　　渡辺美佐子たの主演によって製作を開始することになった」
　　　　★結局、製作されえちないのではないでしょうか？。

　　　　「異色作『流木』　人里離れた山奥の大自然を背景に、野性美溢れた一人の女をめぐって二人の
　　　　　男が巻き起こす本能的な争いをダイナミックに描く一大アクションドラマ『流木』（牡豹とな
　　　　　らず者）は、水島（道太郎）と石原（裕次郎）の顔合せで近く撮影を開始する」
　　　　★結局、製作されなかったようですね。

◆

　　　　●昭和32年4月号…
　　　　「秋の文芸大作決定　読売新聞連載の石坂洋次郎原作『陽の当る坂道』が、監督を田坂具隆、主
　　　　　演は、森雅之、石原裕次郎、津川雅彦、北原三枝、浅丘ルリ子、二谷英明らで～」
　　　　★実際の作品とは、やや顔ぶれが違いますね。

　　　　「芦川いづみ　『命も恋も』では葉山良二とコンビで活躍し、ファンを喜ばせた彼女は、『無法
　　　　　一代』以来時代劇も板についた感じで一段と芸域を広げ、続いて『幕末太陽伝』では着流しで
　　　　　粋なところを見せる。また『猟銃』などの文芸作にも出演する」
　　　　★『猟銃』とは？。井上靖さんの原作のようですね。

◆

　　　　●昭和32年5月号…
　　　　「『恋は炎か』製作決定　雑誌《明星》に連載中の大林清原作のメロドラマ『恋は炎か』が映画
　　　　　化される。この製作は、三部作にする予定で、その第一部は、八月公開の予定なので、明星の
　　　　　読者も、今から種々話題をにぎわしている。運命にほんろうされるヒロインを、日活スコープ
　　　　　の大画面を通して描く、絶対の女性映画である」
　　　　★結局、作られなかったようですね。

　　　　「『幽霊駕籠』映画化　相模太郎の浪曲でお馴染みの九十九鯨太原作『権三と助十』が『幽霊駕
　　　　　籠』と題して映画化される。笑いと人情味あふれた時代劇でフランキー（堺）、ブーちゃん（
　　　　　市村俊幸）のコンビでと企画されたものである」
　　　　★結局、製作されていません。

　　　　「『ブーちゃんの横綱息子』準備中　市村ブーちゃん（俊幸）主演の青春喜劇で、共演に東富士
　　　　　、柳沢慎一を迎えて、土俵狭しと大活躍するブーちゃん喜劇の第一弾。『ああ軍艦旗』の春原
　　　　　政久監督が、ブーちゃんの持味を充分に発揮させようと張切っている」
　　　　★結局、製作されていません。

　　　　「『拳骨と青春』製作決定　雑誌《明星》連載、宮本幹也原作のユーモア小説で、心ない人達の
　　　　　いたずらによって、お人よしの山男のロクさんが、招待を受けたつもりで上京して巻き起す珍
　　　　　事を諷刺的に描いたもので、主演にブーちゃん（市村俊幸）を予定している」
　　　　★結局、製作されていません。

　　　　「青山恭二　『肉体の反抗』『殺したのは誰だ』など異色作に続いて、ファン待望の明朗な近代
　　　　　青年に扮して、『白い夏』で主演が決定。また芦川いづみさんと共演で、歌謡映画『披露さん
　　　　　待ってます』、秋の文芸大作『峠』にも出演予定」
　　　　★芦川いづみさんとの『次郎さん待ってます』とは？（笑）。

　　　　「北原三枝　『今日のいのち』に続いて、明星連載、大林清原作の『恋は炎か』と、『娘と私』
　　　　　が予定されている」
　　　　★予定だけに終わったようですね。

◆

　　　　●昭和32年7月号…
　　　　「『鷲と鷹と』　洋上を航行する老朽貨物船を舞台に恐怖と危難にさらされながら父親の謎の死
　　　　　を究明する海の男石原裕次郎が、広大な画面一杯に暴れ廻る豪快勇壮、凄絶無比の海洋活劇巨
　　　　　篇で、日活イーストマンカラー総天然色、日活スコープ作品として、俊才井上梅次監督の快調
　　　　　のメガホンで、石原裕次郎、芦川いづみ、北原三枝、長門裕之、水島道太郎、大坂志郎らが賑
　　　　　やかに顔を揃えています。颯爽海の男に扮した石原裕次郎が篇中で聞かせる歌は、きっとファ
　　　　　ンの皆様を魅了することでしょう」
　　　　★かなり出演者の顔ぶれが違っていますね。

　　　　「『夜叉面盗賊』　原作・海音寺潮五郎、監督・冬島泰三、主演に長門裕之、香月美奈子、美多
　　　　　川光子らの顔を揃えた豪華絢爛の異色時代劇、日活スコープ作品として近く撮影開始になりま
　　　　　す」
　　　　★結局、製作されていませんね。

◆

　　　　●昭和32年9月号…
　　　　「『大あばれ五人男』　人気最高の日活青春スタアが、空前の大競演する絶対の魅力篇で、日活
　　　　　スコープの広大な画面に美しい色彩でくり拡げる豪華絢爛の娯楽時代劇超大作です。監督は西
　　　　　河克己、日本駄左衛門に石原裕次郎、弁天小僧に津川雅彦、忠信利平に青山恭二、赤星十三に
　　　　　長門裕之、南郷力丸に葉山良二、更に月丘夢路、芦川いづみとそれぞれ主演が決定して準備中
　　　　　です」
　　　　★青山恭二さんの話として、「目下夢中で立ち廻りの練習中です」とありますが、結局、その努
　　　　　力は無駄（？）に終わったのでしょうか？。

◆

　　　　●昭和32年11月号…
　　　　「戦慄の社会映画『十代の罠』撮影準備　監督に野口博志、主演に長門裕之、左幸子、安井昌二
　　　　　、香月美奈子と、賑やかな青春スタアの顔振れで、目下、撮影準備中のこの作品は、高校生の
　　　　　売春、教師の暴力などと、今日の社会問題を痛烈にえぐって、銀幕に叩きつける壮絶な日活独
　　　　　自のアクション社会面映画です」
　　　　★制作されましたが、左幸子さんや安井昌二さんは出演されていません。

　　　　「『狂った野獣』（仮題）　日活スコープ、日活カラー総天然色、脚本、監督・井上梅次、主演
　　　　　・石原裕次郎、北原三枝、青山恭二（予定）」
　　　　★お正月公開作品ということなので、これが『嵐を呼ぶ男』となったのかもしれません。

　　　　「なお、正日公開作品『大あばれ五人男』は止むを得ぬ事情により製作延期となりましたので、
　　　　　前記作品の他に、『夜の出帆』（原作原田康子）が公開される予定です」
　　　　★『大あばれ五人男』は製作されませんでした。また、原田泰子原作の《夜の出帆》は、『白い
　　　　　悪魔』として公開されました。

◆

　　　　●昭和33年4月号…
　　　　「七月の新盆には総天然色、日活スコープの豪華娯楽大作『ギターを持った渡り鳥』（監督／井
　　　　　上梅次、主演／石原裕次郎）があります。井上・石原コンビで贈る夢のアルバムです」
　　　　★実際には小林旭さん主演で完成しています。この件については59年『ギターを持った渡り鳥
　　　　　』の項目のmore“東宝映画『東から来た男』”の項目を参照してください。

◆

　　　　●昭和33年5月号…
　　　　「撮影快調　日活スコープ『亀裂』　この作品は現代が無数に造り出しては待ち構えている亀裂
　　　　　（クレバス）、例えば不信という絶望的な亀裂に落ち込んだ人間の足がきと背徳の行為──こ
　　　　　ういう亀裂の中でそれを乗り切ろうとはい廻る執拗で勇敢な、無償の生き方を非情なタッチで
　　　　　描き、『太陽の季節』からはじまった慎太郎文学の決定版と呼ばれている石原慎太郎の問題小
　　　　　説（文芸春秋新社版）の映画化です。ボクサー、殺し屋、女優、作家と多彩な人物を織りまぜ
　　　　　て～（中略）～新鋭蔵原惟繕が演出を担当、石原裕次郎、北原三枝のゴールデン・コンビがか
　　　　　つてない体当りの演技で難役にいどんでいます。（後略）」
　　　　★石原裕次郎さんのボクシングシーンの写真が出ていますが、これは『勝利者』からでしょうか
　　　　　？。撮影快調という言葉が気にかかりますが、撮影されていたとは思えません（笑）。

　　　　「続々待機する魅惑の新作品！！　（前略）『忘れ得ぬ人』原作大林清、主演北原三枝。『娘と
　　　　　私』原作獅子文六、監督田坂具隆、主演北原三枝。『巴里に死す』原作芹沢光治郎、監督井上
　　　　　梅次（パリ・ロケの予定）、『上と下』原作井上友一郎、監督井上梅次」
　　　　★『忘れ得ぬ人』は筑波久子さん主演となりましたね。『娘と私』と『巴里に死す』は作られて
　　　　　いないようです。『上と下』は浅丘ルリ子さんや川地民夫さん主演で、『明日を賭ける男』と
　　　　　して製作されました。

◆

　　　　●昭和33年7月号…
　　　　「日活は下半期に、続続日活ならではの堂々たる文芸大作を発表する予定です。以下に一例、『
　　　　　風のある道』（原作・川端康成）『波濤』（原作・井上靖）『猟銃』（井上靖）『お吟さま』
　　　　　（原作・今東光）『巴里に死す』（原作・芹沢光治良）『上と下』（原作・井上友一郎）『海
　　　　　と毒薬』（原作・遠藤周作）」
　　　　★実際には『風のある道』と『明日を賭ける男』として映画化された『上と下』あたりだけが製
　　　　　作されたようですね。

◆

　　　　●昭和33年8月号…
　　　　「初秋の銀幕を飾る大作、続々撮影準備に入る！　『口笛が聞こえる港町』　舛田利雄監督、石
　　　　　原裕次郎主演。『銀座の砂漠』（原作・柴田錬三郎）　阿部豊監督、（南田洋子、長門裕之主
　　　　　演）、『太陽をぶち落せ』『十代の海と空』（主演・川地民夫、小林旭、沢本忠雄）」
　　　　★『口笛が聞こえる港町』は『赤い波止場』と改題。『十代の海と空』は、顔ぶれだけ同じで、
　　　　　『嵐を呼ぶ友情』になったのでしょうか？。『太陽をぶち落せ』も日活三悪の共演予定だった
　　　　　ようです。

◆

　　　　●昭和33年9月号…
　　　　「下半期の日活歌謡映画シリーズ！　『第3号倉庫』（ビクターレコード）　小林桂三郎監督、
　　　　　堀恭子、香月美奈子、二谷、牧、主演『哀愁の高速道路〔ハイウエイ〕』『港で生れた男』（
　　　　　神戸一郎）　『お別れ雪ン子』『鐘つき小僧』『苦手なんだよ』と、続々各社のヒット盤から
　　　　　映画化準備中です」
　　　　★前の三作はともかく、後ろの三作は？？？。

　　　　★広告の部分には、「『鈴懸の散歩道』　原作・石坂洋次郎（NHK連続放送）　監督・田坂具隆
　　　　　、主演・石原裕次郎、北原三枝、浅丘ルリ子」というのがあります。これは製作中止となった
　　　　　のでしょうか。

◆

　　　　●昭和33年10月号…
　　　　「揃いも揃った話題作の日活10大作品」として「『完全なる遊戯』『風のある道』『若い川の
　　　　　流れ』『紅の翼』『不道徳教育講座』『友情』『東京の孤独』『お吟さま』『娘と私』『祈る
　　　　　ひと』」
　　　　★あれ？、『完全“なる”遊戯』となっていますね？。『風のある道』も三姉妹は、月丘夢路、
　　　　　北原三枝、浅丘ルリ子ですって？。『紅の翼』にも浅丘ルリ子？。『不道徳教育講座』も浅丘
　　　　　ルリ子？？？（笑）。『友情』は原作・武者小路実篤、出演・葉山良二、南田洋子、轟夕起子
　　　　　、宇野重吉…でも監督は未定。結局、作品も作られたのでしょうか？。『東京の孤独』は、出
　　　　　演・石原裕次郎、北原三枝、川地民夫…。『お吟さま』は、出演・芦川いづみ、葉山良二、滝
　　　　　沢修…これこそ、映画化すれば良かったのに！。『娘と私』は、出演・月丘夢路、北原三枝。
　　　　　『祈るひと』は、出演・芦川いづみ、小林旭…何だか、映画化が実現しなかった作品も面白そ
　　　　　うですね。。

◆

　　　　●昭和33年11月号…
　　　　「『大阪の風』『危険な群像』撮影開始！　十二月に予定されていた川端康成原作『風のある道
　　　　　』と異色思春篇『燃ゆる頬』は都合により来年に製作延期となり、代って畔柳二美原作の微笑
　　　　　しき青春ホームドラマ『大阪の風』と『十代の風』と『十代の罠』姉妹篇思春期物『危険な群
　　　　　像』を撮影開始した」
　　　　★製作延期になった『燃ゆる頬』が？？？ですね。

　　　　「『不道徳教育講座』シリーズ誕生！　三島由紀夫原作、週刊明星連載の『不道徳教育講座』第
　　　　　一作正月三週公開を皮切りに続々映画化の予定」
　　　　★結局、シリーズ化はされなかったようですね。

　　　　「『蒼い描点』（週刊明星連載、松本清張作）は、日活で映画化が決定して、近日クランクイン
　　　　　予定。
　　　　★さて？（笑）。

　　　　「新しい裕次郎映画　『女の山彦』　浅丘、川地民夫」
　　　　★檀一雄さんの原作ものですね。どうなったのでしょう？。

◆

　　　　●昭和33年12月号…
　　　　「『今日に生きる』　舛田利雄監督、小林旭、浅丘ルリ子～（中略）～『不屈の青春』（現代社
　　　　　版）　山下克己原作、小林旭主演で映画化。夜間アルバイト学生の青春記録」
　　　　★小林旭さんは本当に青春もののスターだったのですね。。

◆

　　　　●昭和34年2月号…
　　　　「『海の男は行く』（井上梅次監督）で大海上ロケ！。井上梅次監督のオリジナルシナリオで、
　　　　　波荒き玄界灘に生きる海の兄弟の、不滅の兄弟愛を描く壮絶の海洋巨篇『海の男は行く』（三
　　　　　月公開）は、長門裕之、小林旭の共演が決定。ロケ地も下関方面の大洋上ロケと決定した」
　　　　★結局、この作品は作られなかったようです。

　　　　「『殺意の影』（仮題）　好評の『紅の翼』に次ぐ中平、裕次郎コンビは、船山馨原作の『殺意
　　　　　の影』（仮題）と決定、準備に入った」
　　　　★こんな作品も作られてはいません。

　　　　「新企画決定！　『火口湖』（朝日新聞夕刊連載。沢野久雄作）、『夜間飛行』（フランク永井
　　　　　）、『波濤』（井上靖作）、『許婚者』（水芦光子作）、『東京租界0番地』（オリジナル作
　　　　　品）、『逃亡者』（藤原審爾作）、『両面で待った』（五味康祐作。文藝春秋連載）以上がこ
　　　　　のほど新しく日活映画化決定をみた」
　　　　★別のページでは、『火口湖』は石原裕次郎さんの主演作という予定になっています。

　　　　「『愛と死』　武者小路実篤原作で、文芸作品としての香りに満ちた清純な愛情の美しさを描く
　　　　　総天然色作品として、早くも話題を集めている。主演の石原裕次郎はこの作品で初めての海外
　　　　　ロケを北欧に敢行する」
　　　　★これは『世界を賭ける恋』となりました。

　　　　「『山彦』　文壇の異才・檀一雄の評判作『女の山彦』に材を得て、新鋭牛原陽一監督がメガホ
　　　　　ンを取り、石原裕次郎が主演する陽春随一の豪華メロドラマ巨篇。日本アルプス山麓の湖の大
　　　　　自然を背景に描かれる雄大なスケールを誇る野心作であり、正に待望の裕次郎映画」
　　　　★これは『山と谷と雲』となりました。

　　　　★その他にも、「陽春に放つ日活の14話題作！！」として、『不屈の青春』（原作・山本克巳、
　　　　　監督・今村昌平、小林旭主演）、『お吟さま』（原作・今東光、監督・滝沢英輔、出演・芦川
　　　　　いづみ、葉山良二）、『東京の孤独』（原作・井上友一郎、石原裕次郎主演）、『海と毒薬』
　　　　　（原作・遠藤周作、監督・舛田利雄）などが書かれてあります。『東京の孤独』は小林旭さん
　　　　　の主演で製作されましたね。

◆

　　　　●昭和34年3月号…
　　　　「新境地をめざす裕次郎映画！。六月、日本映画始まって以来の長期海外ロケ総天然色『世界を
　　　　　馳ける恋』（監督／中平康）、その他に話題の菊島隆三脚本の異色アクション物で『掟』があ
　　　　　る。『今日に生きる』は目下撮影高潮だが、近く併行して『山彦』に入る予定」
　　　　★結局、『世界を馳ける恋』は“馳ける”が“賭ける”となり、監督も中平康さんから滝沢英輔
　　　　　さんになっていますね。『掟』はどうなったのでしょう？。ちなみに1956年以降、菊島隆三
　　　　　さん脚本による日活映画はないはずです。

　　　　「『海の男は行く』製作を延期！。大海洋活劇として三月に公開の予定であった井上梅次監督の
　　　　　『海の男は行く』は、決死的な海上ロケ撮影の場面が多く、冬期の玄海灘ロケが至難をきわめ
　　　　　るために一時延期して、春暖を待って、開始することになり、封切は六月の予定」
　　　　★決死的な海上ロケは春暖を待って再開されなかったようです（笑）。結局、こんなタイトルの
　　　　　作品は作られていません。NOBOさんのお話では、井上梅次監督の日活退社は昭和34年8月
　　　　　のようで、その辞意を固めた時期は日活のプロデューサー・児井英生氏のことを書いた、永井
　　　　　健児著《活動屋児井英生》によると“永井荷風の死から二週間ほど経った頃”と記載があるら
　　　　　しく、永井荷風さんが亡くなったのは同年4月30日ですから、それから二週間ほど経った頃
　　　　　というと、5月15日前後…そうなると、井上監督にはこの作品を作る気はすでになかったの
　　　　　かもしれませんね（笑）。しかしここで、yujiroさんからの興味深いお話をご紹介。95年朝
　　　　　日ソノラマ刊／監修・森卓也《ニッポン映画戦後50年》の“井上梅次監督に聞く…”では監
　　　　　督自身が次のように語っておられるようです。
　　　　　“───日活映画に黄金時代が訪れるわけですね。
　　　　◆裕次郎映画を2本撮った後、小林旭の売り出しにかかりました。34年のお正月映画『嵐を呼
　　　　　ぶ友情』もジャズ映画でした。次ぎに会社から第三の男を探してくれと、言われましてね。大
　　　　　部屋にいいマスクの男がいるんですよ。鎌倉アカデミーを出たとか。「趣味は何だ」と聞いた
　　　　　ら「海を見ることです」。大変ナイーブな青年で、なぜかと聞いたら「嫌なことを忘れるから
　　　　　」と答えたのを覚えています。慶応に赤木というピッチャーがいて、裕次郎も三文字だからと
　　　　　赤木圭一郎にしたんです。売り出そうと言うことで、早速『海の男は行く』という海上保安庁
　　　　　の協力を得た海洋アクションを企画しました。主演は小林旭で、その一の部下の役をつけまし
　　　　　た。ところが海が荒れる上に、予算がかかり過ぎるということで、断念したんです。だから僕
　　　　　は名前をつけながら、一本も撮っていないんです。ナイーブな役をやると伸びると思っていた
　　　　　んだけど、ゴーカードで死んじゃったでしょう。海へ憧れた青年が、スターという虚飾の冠の
　　　　　前に敗れたんだと思ってます。”

◆

　　　　●昭和34年4月号…
　　　　「お盆映画『若秩父物語』　森永健次郎監督、轟夕起子、若の花、若秩父他花籠部屋総出演の豪
　　　　　華顔ぶれ」
　　　　★結局、お流れとなったのでしょうか？。

　　　　「裕次郎映画続々決定　このほどシナリオ所蔵の川内康範脚本『二連銃の鉄』が決定、目下鋭意
　　　　　撮影中。南田洋子、渡辺美佐子、二谷英明、沢本忠雄、小杉勇等が共演している。尚、新企画
　　　　　としては、『世界を賭ける恋』＝武者小路実篤原作《愛と死》より＝　『男なら夢を見ろ』『
　　　　　青春蛮歌』＝白川渥原作、週刊明星連載＝　『あじさいの歌』＝石坂洋次郎原作、東京中日他
　　　　　二紙連載＝　『真紅の瞳』＝婦人生活連載」
　　　　★『二連銃の鉄』も元々は石原裕次郎さんの主演作品の企画だったようですね。『青春蛮歌』も
　　　　　ですか。『真紅の瞳』というのは、流れたのでしょうね。

　　　　「川地民夫主演で石原慎太郎原作の『狂った潮』　石原慎太郎の名作《ヨットと少年》を『狂っ
　　　　　た潮』と改題して、『狂った果実』の姉妹編として、川地民夫、清水まゆみで映画化」
　　　　★これは結局、川地民夫さん、清水まゆみさん主演で、『海は狂っている』と改題されました。

　　　　「日活二大スター爆発の巨弾篇！！　アキラ作品　総天然色『海の男は行く』　原作・大村隆弘
　　　　　、伊藤一雄、監督・井上梅次、主演・小林旭、浅丘ルリ子」
　　　　★やはり予定はされていたらしい『海の男は行く』、企画担当者や原作者、舞台や配役などから
　　　　　推察しますと、おそらく、後に和田浩治さん主演の61年『海峡血に染めて』となったようで
　　　　　す。

◆

　　　　●昭和34年5月号…
　　　　「若水ヤエ子の女中シリーズ続々製作決定　好評の若水ヤエ子の女中シリーズは目下第三作『お
　　　　　ヤエの身替り女中』を製作中だが、続いて、『あんま天国』『女中と拳銃』『泣きべそ天使』
　　　　　『百万長者』『我が名はペテン師』等続々企画が決定した」
　　　　★結局、実際には、『おヤエのあんま天国』『おヤエの女中と幽霊』『おヤエの女中の大将
　　　　　』『おヤエのもぐり医者』『おヤエの初恋先生』という作品が出来上がっています。

◆

　　　　●昭和34年6月号…
　　　　「『青春蛮歌』に小林旭主演！　週刊明星に連載好評の白川渥作『青春蛮歌』は小林旭主演で八
　　　　　月二週に公開、小林旭の初の若々しい坊ちゃん教師ぶりは話題となろう」
　　　　★結局、この作品は長門裕之さん主演で完成しました。

　　　　「豪華キャストで青春社会ドラマ！　『爆薬に火をつけろ』は新鋭蔵原惟繕で、小林旭、北原三
　　　　　枝の初顔合せに安井昌二、芦川いづみ、白木マリ（現・万理）、岡田真澄（現・眞澄）などの
　　　　　豪華キャストで、ヒューメンな感動を盛る青春社会ドラマとして目下製作準備中」
　　　　★確かに『爆薬〔ダイナマイト〕に火をつけろ』は小林旭さん主演で製作されましたが、予定の
　　　　　北原三枝さんと芦川いづみさんの出演はありませんでした。それに“青春社会ドラマ”だった
　　　　　かどうかも？？？（笑）。しかし、確かに小林旭さんと北原三枝さんの組み合わせというのは
　　　　　見てみたかったですね。

　　　　「『バラ色のノート』（上田雄作、秋元書房刊）乙女の感傷と慕情を謳う思春期作として日活映
　　　　　画化決定しました」
　　　　★うーん、これはどうなったんでしょう？？？。

◆

　　　　●昭和34年8月号…
　　　　「『キャンパス110番』は中平康監督、浅丘ルリ子主演と決定、好評の『その壁を砕け』の社
　　　　　会劇から一転して軽快な青春喜劇に中平監督の才腕が期待される」
　　　　★結局、この作品は、『“キャンパス110番”より学生野郎と娘たち』となり、浅丘ルリ子さ
　　　　　んは出演せず、芦川いづみさんや中原早苗さん、清水まゆみさん主演で製作されました。

　　　　「『清水の暴れん坊』映画化！　裕ちゃんが素晴しい啖呵をきかせるテイチクレコード『清水の
　　　　　暴れん坊』は、十月作品として映画化される。松尾昭典監督の現代劇で、裕ちゃん扮する片目
　　　　　の陽気なヤクザの活躍が見もの」
　　　　★当初はどうやら主人公は森の石松そのものの設定だったようですね。

　　　　「『風のある道』　長門、葉山、芦川、浅丘らの豪華キャスト決定。文豪川端康成原作『風のあ
　　　　　る道』は、注目の文芸大作としてクランクインの日が待たれていましたが、いよいよ八月上旬
　　　　　より、西河克己監督、長門裕之、葉山良二、芦川いづみ、浅丘ルリ子らの豪華キャストで撮影
　　　　　開始と決定」
　　　　★結局、長門裕之さんと浅丘ルリ子さんは出演していませんね。

◆

　　　　●昭和34年9月号…
　　　　「『われらの時代』映画化決定！　若い世代のチャンピオン作
　　　　　家大江健三郎作の『われらの時代』は小林旭主演で日活映画化が決定しました。十一月作品」
　　　　★結局、長門裕之さんの主演作となりました。

　　　　「『風に唄う男』撮影開始！　日活三悪の一人沢本忠雄は、小林旭、川地民夫に次いでこのほど
　　　　　レコード界にデビュー、コロムビアより『風に唄う男』を吹き込んだが、これを主題歌に沢本
　　　　　忠雄の主演、吉村廉監督で撮影開始された」
　　　　★撮影開始されたとありますが、こんな作品はなさそうです？？？。

　　　　「ヒット曲続々映画化決定！　『冷たいキッス』『落書酒場』のフランク永井の二曲は近く日活
　　　　　で映画化が決定した。又、ザ・ピーナッツの『小さな花』も日活映画化決定」
　　　　★ザ・ピーナッツの『小さな花』は『可愛い花』となったようですね。

　　　　★また、小林旭さんの主演作として、『海を抱く男（仮題』が紹介されています。

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　　　　●昭和34年10月号…
　　　　「『天と地を駈ける男』舛田利雄監督で　既報裕次郎の航空映画『天と地を駈ける男』は、監督
　　　　　に『今日に生きる』の舛田利雄が決定、石原、北原三枝コンビに新人赤木圭一郎が共演する」
　　　　★赤木圭一郎さんの出演が予定されていたとは驚きです。実現してほしかったですね。

　　　　「『銀座旋風児』第二話製作決定　小林旭主演の『銀座旋風児』は好評により連作と決定、第二
　　　　　話は北海道を舞台に愈々旋風児の大活躍を、川内康範脚本により描く予定、公開は明春」
　　　　★確かに第二話は製作されましたが、舞台は北海道ではなかったですね。北海道へ行くと、“渡
　　　　　り鳥”になってしまいます（笑）。また、公開はもっと早められ、同年12月となりました。

　　　　「二ヒット曲映画化準備中　ザ・ピーナッツの『可愛い花』は『海の罠』の井田探監督、岡田真
　　　　　澄、白木マリ、ザ・ピーナッツ主演で、『らくがき酒場』は『俺は淋しいんだ』の小杉勇監督
　　　　　、フランク永井、香月美奈子で共に準備中」
　　　　★前者は製作されましたが、後者は製作されなかったようですね。

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　　　　●昭和34年11月号…
　　　　「『いとしのスーちゃん』映画化　レコード会社から発売され目下人気集中の『いとしのスーち
　　　　　ゃん』は、『風のある道』の西河克巳監督、川地民夫、沢本忠雄、葉山良二主演で映画化準備
　　　　　中。十二月一週公開」
　　　　★結局、作られてはいないのではないでしょうか。

　　　　「『ドラムが俺を殺す』製作準備開始　十二月の小林旭作品は、好評の『銀座旋風児』に次ぐ川
　　　　　内康範の原作脚本で、共演浅丘ルリ子、中原早苗で『ドラムが俺を殺す』を製作準備中。監督
　　　　　蔵原惟繕」
　　　　★これも結局、作られてはいないようです。

　　　　「日活では次の作品の映画化権を獲得した。『夜生きるもの』（週刊サンケイ連載、菊村到作、
　　　　　主演、小林旭）、『新刑事物語』（週刊サンケイ連載、樫原一郎作）、『喧嘩三四郎』（夕刊
　　　　　タイムズ連載、城戸礼作）、『東京拳銃街』（森川哲郎作）」
　　　　★『新刑事物語』はシリーズのうちのどれかの原作ではないかと思われますが、他の作品はどれ
　　　　　も作られていないのではないでしょうか？。『喧嘩三四郎』は後に二谷英明さん主演の『摩天
　　　　　楼の男』になったのでしょうか？。

　　　　「小林旭初のジェットパイロットに　明年正月の小林旭作品は『空こそわが命』（福本和也作、
　　　　　講談倶楽部所載）を決定、マイトガイ旭は初めてジェットパイロットに扮して大暴れする」
　　　　★この作品も結局見送られたようですね。

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LAST UP DATE ◆ 2008年7月19日