幻の日活映画、その他（1961年）

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幻の日活映画、その他（1961年）

　　　　このコーナーはNOBOさんやkeiさん、サム・スペードさん、しょうちゃんなど、日活映画ファ
　　　　ンの皆様にご提供いただいた日活の広報冊子（？）《日活映画》誌面などに掲載されている予定
　　　　作品の告知や、由美子さんやツカさんにご提供いただいた新聞の縮刷版調査の内容を中心に、特
　　　　に幻の作品（実際には制作されなかった作品、タイトルや出演者が変更になった作品など）を紹
　　　　介します。

◆

　　　　●昭和36年1月号…
　　　　「赤木圭一郎の新作。オリジナル・シナリオが多かった赤木が、田村泰次郎の原作を得て彼の魅
　　　　　力を十二分に発揮する新作『殺し屋には墓場がない』は二月二週の公開が決定。牛原陽一監督
　　　　　の下、撮影が開始された。共演／笹森礼子」
　　　　★むむ、『豚と軍艦』に付けられていた仮題を使い回していますね（笑）。しかしこの作品は『
　　　　　紅の拳銃』となります。

　　　　「御本人（石原裕次郎）が期待している海外ロケものは目下いろいろ適当な企画を練っている段
　　　　　階だが、ほぼ五月頃には実現の見込み。主としてアフリカが舞台となり、題して『キリマンジ
　　　　　ャロの決闘』。虎やライオンの跳梁する秘境ケニヤの暗黒大陸をバックに、かなり格調の高い
　　　　　作品が出来そう」
　　　　★アフリカロケ？。この企画がこの年の12月の『アラブの嵐』となったのでしょうか？。

　　　　「小林旭作品は人気の“渡り鳥”シリーズが、国内では木曽節で名高い木曽川から富士山麓付近
　　　　　ロケ。また、第二回目海外ロケ作品としては『ナイヤガラの決闘』などがうわさされている。
　　　　　もしこれが実現すれば、マッキンレー山脈の雄大な風景をふんだんに取り入れた美しいロケが
　　　　　見もの。パルプ会社の利権をめぐる活劇で、文字通り北極圏にアキラの勇名を轟かせることに
　　　　　なる」
　　　　★前者は多分『大森林に向かって立つ』（“渡り鳥”シリーズではない）でしょうね。確かに“
　　　　　渡り鳥”シリーズとしても不思議ではない作品ですが。後者は石原裕次郎さん主演予定だった
　　　　　企画ですね。お下がりですか？（笑）。

　　　　「さきに宍戸錠主演作として噂された『殺し屋には墓場がない』が、2月にはご両人（赤木圭一
　　　　　郎・宍戸錠）共演でいよいよ封切られる。（中略）6月にはトニーの初パイロット作品『零戦
　　　　　黒雲一家』が登場する」
　　　　★『紅の拳銃』は宍戸錠さんとの共演作になる予定だったのでしょうか？。また“宍戸錠主演作
　　　　　”とある点に注意です。これはやはり赤木圭一郎さん存命中に、宍戸錠さんがダイヤモンドラ
　　　　　インに参入したと解釈するべきでしょう。また『零戦黒雲一家』が赤木圭一郎さん主演で予定
　　　　　されていたとは驚きです。

　　　　「ヒデ坊（和田浩治）の作品としては、石坂洋次郎原作の『あいつと私』が決まっているほか、
　　　　　人気の“愚連隊”シリーズ企画も続々と待機している」
　　　　★前者は石原裕次郎さん主演の名作となり、また後者は結局は作られていません。

◆

　　　　●昭和36年2月号…
　　　　「石原裕次郎の三月一週作品が『海が俺を待ってるぜ』と決定した。『俺は待ってるぜ』を思わ
　　　　　せてはるかにしのぐ、スケールの大きな娯楽アクション篇で、芦川いづみが共演、『都会の空
　　　　　の用心棒』の新鋭野村孝の監督が予定されているのが期待の的だ」
　　　　★どうやら、俺を待っていたのは、スキー場での骨折と入院だったようですね（笑）。

　　　　「小林旭のヒット・ソング『でかんしょ風来坊』の映画化が決定した。アキラファンにとってま
　　　　　ず、早春最大の贈り物となるだろう。浅丘ルリ子、宍戸錠の名トリオが好調をつづけ、渡り鳥
　　　　　シリーズの名匠斉藤武市が監督に当る予定である」
　　　　★宍戸錠さんは出演されていませんね。“暴れん坊（銀座の次郎長）”シリーズではない展開が
　　　　　考えられていたのでしょうか？。

　　　　「第三の男赤木圭一郎が『打倒』以来のボクサー役を得て、大いに張り切る新作の題名は『闘い
　　　　　つづける男』。これは明星連載の小説《挑戦者》の映画化で、笹森礼子の共演が予定されてい
　　　　　る。ボクシング選手に親友の多いトニイは、このところ暇を見ては各ジムの練習場を見学、ス
　　　　　クリーン上でかってみられなかった迫真の試合場面を展開してみせると、激しい意欲を燃やし
　　　　　ている」
　　　　★この題名の作品は、後に和田浩治さんで制作されています。

　　　　「三人の兄貴が宍戸錠を加えて四人になったダイヤモンド・ラインの最年少スタア和田浩治の三
　　　　　月作品は、『港に生まれた次男坊』（仮題）。ヒデ坊の魅力のすべてを書きこまれたシナリオ
　　　　　の完成に、大いに気を良くしているだけに、爆発的な面白さが期待される。（中略）監督は西
　　　　　河克巳」
　　　　★『大暴れマドロス野郎』（一条明さんの原作の題名が《俺は港の次男坊》）と改題、監督も山
　　　　　崎徳次郎さんに変わりました。

◆

　　　　●昭和36年3月号…
　　　　「石原裕次郎、赤木圭一郎の相次ぐ負傷で（※物凄く微妙なタイミングの記事ですね。まだ“負
　　　　　傷”なんですから）、一番忙しい身となった小林旭は、『嵐が俺を呼んでいる』『でかんしょ
　　　　　風来坊』に次いで流れ者シリーズ『さすらい』に主演する。野口博志監督で、浅丘ルリ子共演
　　　　　というメンバー。四月三週の封切が予定されている」
　　　　★この『さすらい』は監督が山崎徳次郎さんに変わり、『風に逆らう流れ者』となったようです
　　　　　。後に“流れ者”シリーズではない小林旭さん主演の『さすらい』が制作されました。

　　　　「『ろくでなし稼業』で快調の主演ぶりを見せるエースのジョーこと宍戸錠の主演第二回作品に
　　　　　『悪党商売』（仮題）が決定した」
　　　　★結局、この作品はお流れになったようですね。二谷英明さんと吉永小百合さんが共演予定とな
　　　　　っていますので、『早射ち野郎』でも『用心棒稼業』でもなさそうです。

　　　　「和田浩治のために以前から企画されていた『少年白柄組』が四月四週作品として決定、準備に
　　　　　入った」
　　　　★この作品は『無鉄砲大将』となったようです。

◆

　　　　●昭和36年5月号…
　　　　「裕次郎の再起第一作　石原裕次郎の負傷は、その後順調に回復に向い、アクション物にも十分
　　　　　耐えられる見通しがついたので、再起第一作は文芸大作『あいつと私』を延期し、スケールの
　　　　　大きいアクション篇『ノサップの銃〔ガン〕』と内定した。これは北海道の凄絶な自然をバッ
　　　　　クにくりひろげられる裕次郎ならではの男性篇、監督共演者は未定だが五月中にはクランクイ
　　　　　ンし、七月には久々の雄姿をファンの皆さんのお目にかけられるはず。御期待下さい」
　　　　★結局、この作品は、宍戸錠さん主演で作られましたね。

　　　　「和田の江戸っ子啖呵　和田浩治の六月作品は、第一週に、『神田育ちの暴れん坊』が決定した
　　　　　。すし喰いねえのタンカもあざやかな和田の江戸ッ子ぶり、スカッとして若さをふんだんにば
　　　　　らまくアクションの魅力を御期待下さい。清水まゆみが名コンビぶりを見せる予定」
　　　　★こんなタイトルの作品はありませんが、何なのでしょうね？。『峠を渡る若い風』にでも化け
　　　　　たのでしょうか？。

◆

　　　　●昭和36年6月号…
　　　　「全快の裕次郎にすばらしい企画がズラリ～（中略）～さいはての北海道、ノサップ岬に大ロケ
　　　　　ーションを敢行する『ノサップの銃』は、スケールの大きさではその比を見ないほどの豪快な
　　　　　アクション篇です。日本離れした荒涼たる風景に颯爽と立つ王者・裕次郎の勇姿を、期待しな
　　　　　い人はいないでしょう。『雲（原文のまま。正しくは“零”）戦黒雲一家』も、前々から企画
　　　　　されていた航空スペクタクルで、これも最高の面白さとスケールを誇るものです。“国際刑事
　　　　　警察”の副題を持つ『東半球は暴風圏なり』もかつてない面白い趣向がこらされる大型アクシ
　　　　　ョン篇で、これも絶対の期待が持てるものです。しかも、世界のスタア裕次郎にふさわしい大
　　　　　物中の大物『キリマンジャロに立つ男』も、脚本の完成が急がれている状態とあっては、裕次
　　　　　郎がひとときもじっとしておられないほど、はりきっているのも当然のことでしょう」
　　　　★『ノサップの銃〔ガン〕』は宍戸錠さん主演作品になりましたね。『東半球は暴風圏なり』は
　　　　　立ち消えでしょうか。『キリマンジャロに立つ男』は前述の『キリマンジャロの決闘』のこと
　　　　　でしょうが、結局、アフリカロケものとして『アラブの嵐』になったのでしょうね。

　　　　「小林旭七月作品　ますます元気一杯のアキラが取りくむ七月作品は『野郎どもの港町』と決定
　　　　　しています。これは、渡り鳥、流れ者とはまた違った魅力に溢れるアクション巨篇です。アキ
　　　　　ラはこの『野郎どもの港町』で新趣向を御披露しようと大ハリキリです。共演は名コンビ浅丘
　　　　　ルリ子。監督は舛田利雄」
　　　　★タイトル、監督、共演女優さんからも、『太陽、海を染めるとき』になったと推測します。

　　　　「宍戸錠の七月作品　早射ちにかけては世界第三位の腕前を持つエースのジョウが、『早射ち野
　　　　　郎』以上の本格的西部劇『荒野を馳（原文のまま）ける男』にとりくみます。これはジョウさ
　　　　　んお得意の早射ちと、乗馬姿が、充分みられる娯楽大作です。共演は笹森礼子」
　　　　★これは『赤い荒野』のことでしょう。

　　　　「二谷英明と和田浩治が共演　七月四週に予定されている『闘いつづける男』は、ダイヤモンド
　　　　　ラインの二人、二谷英明と和田浩治の豪華顔合せです。ダイヤモンドライン二大スタアの顔合
　　　　　わせはもちろんはじめてで、今からいろいろの話題をまいています」
　　　　★『闘いつゞける男』は結局、二谷英明さんの役どころは葉山良二さんになったようですね。こ
　　　　　こで興味深いのは、“ダイヤモンドラインの二人”という表現です。この時点で、和田浩治さ
　　　　　んも二谷英明さんもダイヤモンドラインのメンバーだったということです。この時点で、すで
　　　　　に石原裕次郎・小林旭・和田浩治・宍戸錠・二谷英明という五人がダイヤモンドラインを構成
　　　　　していたことになります。元のダイヤモンドラインの“ダイヤモンド”は野球の一塁→二塁→
　　　　　三塁→本塁のことをさすわけですよね？（ホームベースの形のことではないですよね？）。す
　　　　　ると四人のはず。しかしこの時点での“ダイヤモンド”は本当に宝石のダイヤモンドの形を表
　　　　　わしていて、五人ということになるのでしょう。

◆

　　　　●昭和36年10月号…
　　　　★「『太陽は狂ってる』で、逆境の中の純愛をみごとに演じた浜田光夫と吉永小百合。この素晴
　　　　　しいフレッシュ・コンビには、石坂洋次郎の珠玉篇『草を刈る娘』や、『俺っちは山の英雄だ
　　　　　』など、胸おどる企画がズラリと待っています」
　　　　★『俺っちは山の英雄だ』、どんな作品になる予定だったのでしょうね？。

　　　　「この映画『ナイル河の決斗（仮題）』を作るのは、原作がアフリカ探険の経験者藤島泰輔、脚
　　　　　色が『太陽は狂ってる』の新鋭ライター山田信夫、監督が『あいつと私』の鬼才中平康と、若
　　　　　さに溢れたベスト・メンバー」
　　　　★これは『アラブの嵐』と改題されました。

　　　　「『波濤を越える渡り鳥』に次ぐ小林旭の海外ロケ映画は、夢の宝庫といわれるアラスカが舞台
　　　　　です。題して『アラスカの嵐』。ストーリーは、アラスカに乗りこんだ日本一の青年が、幾多
　　　　　の妨害と悪条件にもめげず、ついに一大パルプ工場を築くという壮大この上もないもの」
　　　　★結局、実現しなかったようですね。浅丘ルリ子さんの共演も予定されていたようです。ちなみ
　　　　　にこの号で紹介されている海外ロケの予定で、そのまま実現したのは、宍戸錠さんの『メキシ
　　　　　コ無宿』だけのようです。
　　　　「浜田光夫の新作　『太陽は狂ってる』『草を刈る娘』につづく、浜田光夫の総天然色第三作は
　　　　　、『俺たちは海の大将だ』と決定した。『豚と軍艦』のシナリオ・ライタア山内久が、鋭意執
　　　　　筆中のシナリオは、海に芽生える若者たちの純愛を描くもので、抒情敵タッチもみごとなとこ
　　　　　ろを見せる斉藤武市監督のメガフォン、浅丘ルリ子との初顔合せ（予定）とともに、浜田光夫
　　　　　の魅力を十二分に生かすもの、と期待されている。封切りは、十一月四週の予定」
　　　　★どうやら、これが『母あちゃん海が知ってるよ』となったようですね。

　　　　「石原裕次郎の予定作品『青年の椅子』は、『ナイル河の決斗』のエジプト・ロケ終了後、撮影
　　　　　を開始、正月作品として登場する模様、その他、裕次郎は兄石原慎太郎原作の『兄貴』の映画
　　　　　化にも主演する予定である。又、宍戸錠の予定作品には『流氷の男』（仮題）、ダンプ・ガイ
　　　　　二谷英明には、異色アクション篇『野獣の門』や、『隼太郎挑戦す』という快作が待機中」
　　　　★結局、『兄貴』には石原裕次郎さんは出演されていませんね。宍戸錠さんの『流氷の男』も作
　　　　　られていませんね（『ノサップの銃』はこれより前でしょう）。二谷英明さんの『隼太郎挑戦
　　　　　す』も作られていませんね。

◆

　　　　●昭和36年11月号…
　　　　「『にあんちゃん』を凌ぐ感動の新作　十一月番組の異色作として期待される『お母あ、海が知
　　　　　ってるよ』は、名匠斎藤武市監督のメガフォン、浜田光夫、吉永小百合の純愛コンビに、南田
　　　　　洋子が共演して撮影を開始した」
　　　　★結局、これは吉永小百合さんが出演せず、和泉雅子さんの出演となり、『母ぁちゃん、海が知
　　　　　ってるよ』となりました。

　　　　「十一月の併映作品として、『大都会のおとし穴』『街に気球が上がる時』の二本が決定」
　　　　★後者はそのまま作られましたが、前者は『都会の魔窟』と改題されました。

　　　　「早くも、一九六二年度正月作品の大体の予定が決った。石原裕次郎のエジプト・ロケ映画『ナ
　　　　　イル河の決闘』は、『アラブの嵐』と題名が変更され～（後略）」
　　　　★『ナイル河の決闘』というタイトルでしたら、やはり河の中での格闘シーンが必要となったか
　　　　　もしれませんね（笑）。

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LAST UP DATE ◆ 2005年5月7日