トニーとジョー（Part2）

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トニーとジョー（Part2）

　　　　ここでは赤木圭一郎さん主演の“拳銃無頼帖”シリーズ第2作『電光石火の男』をご紹介。この
　　　　作品は宍戸錠さんだけではなく、二谷英明さんも登場してくるので珍しい作品かも。ただどうも
　　　　脚本が練られていないと言いますか、全体を通して、あまり面白いとは思えないのですが？。

◆ ◆ ◆

　　　　走る夜汽車。酔ったチンピラどもに酒を飲めだのと絡まれる女性。席を代わろうとすると邪魔を
　　　　されるのだが、彼女の斜め前に座っていた男が、チンピラどもをまたいでデッキへ行く。チンピ
　　　　ラどもは「ナメやがって！」とばかりに後を付けるが、逆に殴り倒され、銃を出した男（柳瀬志
　　　　郎）もそれを取り上げられる。

　　　　男　　「あぶねえ道具は俺が預かる。文句あるか？」

　　　　振り向く男は丈二（赤木圭一郎。ここで初めて顔が写る）。タイトルがかぶさり、クレジット（
　　　　音楽のみ）は走る列車の前方が写るだけの画面（鉄橋を渡ったりする）。

　　　　丈二が席に戻ると、女が礼を言う。彼女は歌手のジーナ・中川（白木マリ（現・万理））。四日
　　　　市市へ行くという。丈二と同じ行き先である。

　　　　ジーナ「あたし、四日市は初めてなんですけど」
　　　　丈二　「俺はそこで育ったんだ」
　　　　ジーナ「じゃあ素敵な町ね。故郷ですもの」
　　　　丈二　「悲しい町かもしれねえや」
　　　　ジーナ「そういう想い出があるんですの？」

　　　　丈二は迎えが来ていると困るので、一つ手前の駅で降りて、海岸を歩くという（“夕日と拳銃”
　　　　が流れる）。夜は明けている。銃声が聞こえるので、思わず懐に手を入れる丈二。砂浜に若い男
　　　　がうずくまっている。もう一方の銃を持っているらしい男の足元だけが写る。ちなみにyujiro
　　　　さんのお話では、この海岸は三重県津市の香良洲海岸だとのこと。

　　　　男　　「どうした？。相手が悪かったか？。ハジキを拾ってもう一度やってみるか？」

　　　　若い男は地元の大津組のチンピラらしく、相手に呼び出しをかけたが手も足も出ないようだ。

　　　　男　　「あっはっはっ、逃げてもダメってよ。向かってきても無駄さ。そろそろこっちもタマ切
　　　　　　　　れだ。ラストの一発は間違いなく心臓へ行くぜ」

　　　　しかし銃をハジき飛ばされる男・五郎（宍戸錠）、丈二に気付く。

　　　　丈二　「動くなぃ」

　　　　丈二は仲裁をすると言い、若者と五郎の銃を海へ捨て、自分の銃も同様に海に捨てる。

◆

　　　　…三年前、恋人と別れた場所らしい波止場にたたずむ丈二はジーナと再び出会う。ジーナは二度
　　　　と会いたくない男とはっきり話を付けるためにここへ来たと言う。

　　　　丈二　「別れ話ってのは、当人同士でするもんだ」

　　　　町で先の若者・貞夫（杉山俊夫）に会う丈二。彼は大津組の若い者で、お礼にと、喫茶店“異邦
　　　　人”へ丈二を誘う。三年前にはなかった店らしい。可愛いウェイトレス・節子がいる。

　　　　節子　「いらっしゃい」
　　　　貞夫　「コーヒーでイイな？。コーヒー二つ」
　　　　節子　「はい」

　　　　このウェイトレス・節子の役は、この作品が日活映画デビューの吉永小百合さんである。貞夫の
　　　　話では、大津組はハイライト興業という新興ヤクザの組にいた丈二という男に親分が足を撃たれ
　　　　てから傾き加減らしい。また丈二の代わりに雇われた先般の五郎が好き放題に暴れているという
　　　　。正体が明かせないままでいる丈二。

　　　　丈二　「兄貴はよせ」
　　　　貞夫　「あれほどの腕なら相当な名前だろ？」
　　　　丈二　「大したことねえや。そうだな…やっぱり兄貴でイイよ」

　　　　大津組へ行こうということになり、そこで店に戻ってきた若いマダム・圭子（浅丘ルリ子）と出
　　　　くわす丈二。見つめ合う丈二と圭子。圭子は黙って階上へ去る。

　　　　節子　「誰だってマダムを見たら、ボッとしちゃうわよ」

　　　　貞夫の話では、圭子の父は去年死に、その後、店を出したらしい。そして近々、警察関係者と結
　　　　婚するらしいという。何と相手は丈二の先輩で、しかも大津組の息子・昇（二谷英明）らしい。
　　　　彼は警視庁から、部長刑事となって、地元に戻ってきたという。

　　　　…大津組では代貸の辰吉（高品格）に凄まれるが、親分の仁作（菅井一郎）には歓迎される。仁
　　　　作は丈二に撃たれたのではないことが判っているのだ。

　　　　…その帰り、橋のたもとで圭子が待ち受けている。刑務所へ送った手紙を読んでくれなかったこ
　　　　とを責める圭子。丈二は五年の刑期を三年で終えて出てきたのは失敗だったかもしれないと話す
　　　　。もう三ヶ月後に出てきてくれたら、すでに昇と結婚していたのに、という圭子…。

◆

　　　　…サイレンサーを着けた銃で、壁のヌード写真のオッパイを撃つ五郎。ハイライト興業の社長で
　　　　ある麻島均（嵯峨善兵）が経営するクラブ“キャディラック”の地下室。警察のガサ入れだと知
　　　　らせに来る社長の片腕・金（藤村有弘。もちろん、イントネーションは怪しい！。笑）。五郎は
　　　　穴のあいた写真の上にジーナの写真を貼る。どうやらジーナの相手は五郎らしい。ホルンを吹く
　　　　五郎、楽器の手入れをしている（道具は銃の手入れと似たようなものなので）。

　　　　昇　　「君が海岸で拳銃を振り回してたことは判ってんだ」
　　　　五郎　「え？、そいつは初耳だねえ…大方、太平洋の魚がサツの旦那にインチキなネタを提供し
　　　　　　　　たんじゃないですか？」
　　　　昇　　「殺し屋にしてはオツな内職（ホルンを見て）、やるんだな」
　　　　五郎　「チョッチョッチョッ（擬音）、旦那、殺し屋とはひどいじゃないですか」
　　　　昇　　「違ったかな。悪かったな。いずれ動きの取れない証拠を見つけてやるからな」

　　　　拳銃は発見出来ず、昇は麻島と店で話す。そこへ丈二が入ってくる。

　　　　丈二　「少し早すぎたかな。成績が良かったんで、ヒマが出ちまったんです」
　　　　金　　「丈二さん、良かったねぇ。あンなところは一日も早く出たほうがイイんだよ。知らせて
　　　　　　　　くれたら、私、迎えに行ったのに」

　　　　丈二は昇に圭子とは何でもないと言う。警察は引き上げて行く。

　　　　金　　「丈二、あの警察のタンナな、おまえのこと、きっと足、洗わせてみせる、言うてる。冗
　　　　　　　　談ないよねー。社長、この男、うちの組の功労者ですからね…」
　　　　麻島　「昔のことは言うな。時世は変わった…」

　　　　金は麻島の薄情な態度にいまひとつ納得がいかない。金は意外に昔気質で生真面目な男らしい。

　　　　丈二　「どうやら、邪魔者が舞い戻ったらしいな」
　　　　五郎　「その通りだ」

　　　　五郎が銃を二挺持って出てくる。

　　　　金　　「五郎、何するの、こんなところで」
　　　　五郎　「どっか適当な所へ移動してもイイぜ。丈二とか言うそうだな。こう早く勝負が着けられ
　　　　　　　　るとは運が良かったぜ」
　　　　丈二　「なるほど、おめえか、五郎ってのは。そういや、女にフラれるようなツラしてるよ」
　　　　五郎　「何を！？」
　　　　丈二　「まあ聞けよ。おめえはジーナって女に惚れてんのと違うか？」
　　　　五郎　「ジーナ？。何だって、おめえ、ジーナを知ってんだい」
　　　　丈二　「おめえと別れたがってるよ」
　　　　五郎　「野郎！、勝負しろ！」
　　　　丈二　「しょうがねえ奴だな。それにしてもここじゃマズいな」
　　　　五郎　「こっちへ来い」

　　　　金がアタフタする中、二人は地下室へ。

　　　　丈二　「勝負勝負って、バカの一つ覚えみたいにイキるなぃ。勝負したらおめえの息の根が止ま
　　　　　　　　って二度とジーナと会えなくなるかもしれねえぜ」
　　　　五郎　「何言いやがる！。止まるのは、てめえのほうだい！」

　　　　一方、階上では麻島が丈二は消しておくべきだったと金に話している。そして金は人が良すぎる
　　　　と叱責される。昇と丈二が友人だというのも都合が悪いという麻島。昇が自分の父親の組は手加
　　　　減しかねないと言うのだ。五郎はジーナが四日市市に来ていることを丈二から聞かされる。それ
　　　　でも、

　　　　五郎　「必ずどっかでおめえのドテッ腹に風穴をあけてやるぜ」
　　　　丈二　「まあ、しょうがねえだろう。そいつがおめえの趣味らしいからな。俺の言うことも聞い
　　　　　　　　てくれたおめえだ、一つくらい言うことを聞いてやんなくちゃ悪いや」
　　　　五郎　「勝負はいつやる？」
　　　　丈二　「慌てんなぃ。気が向いたらだよ」

◆

　　　　…昇がアパートに戻ってくる（さすがにヤクザの父親の実家には同居出来ないようだ）。圭子が
　　　　　部屋で待っていて、結婚を取り止めてほしいと切り出す。昇は丈二が戻ってきた時から予測は
　　　　　していたようだが、圭子は丈二は彼女と結婚するなどとは言っていないと話し、去っていく。

　　　　…“キャディラック”の楽屋では歌い終ったジーナ（劇中、二曲ほどジーナが歌うシーンがあり
　　　　ますが、本人の声のような気がします）と五郎がモメている。丈二が五郎を呼び出しにくる。夜
　　　　、“異邦人”がハイライト興業の者たちに壊される。現場検証をする昇。大津組の若い者たちは
　　　　、自分たちの縄張りだとイキり立つが昇がやってきて、穏便に済ませるように頼んでいく。我慢
　　　　の出来ない貞夫は“キャディラック”へ単身乗り込むが、機転を効かせた丈二が彼を殴り、表へ
　　　　連れ出し、帰らせる。その後、ハイライト興業の者たちがどんどん検挙されることに。

　　　　五郎　「（昇を）消そうか？」
　　　　金　　「警察のタンナをかい？」
　　　　五郎　「警察だろうと何だろうと、都合の悪い奴は眠ってもらうより仕方がねえや」

　　　　丈二もそれが麻島の意向なら仕方ないと言う。

　　　　…仁作は辰吉を呼びつけ、三年前の回想を。工場跡のようなところに二人きりで会う約束だった
　　　　のに丈二を連れてきた麻島と会う仁作。陰には金もいる。麻島は何と仁作を撃ち、その罪を丈二
　　　　にかぶらせたのだった。仁作は、町から根こそぎ悪い奴らを検挙するという息子の話から、ハイ
　　　　ライト興業と大喧嘩をしようと辰吉に持ちかける。

　　　　昇殺しを丈二に命じる麻島。引き受けて出て行く丈二。そして麻島は、念のために五郎を残した
　　　　と言い、二人とも消してこいと言う（相当、悪どい男のようです）。

　　　　五郎　「やっぱり社長だよ…（なかば呆れながら出て行く）」

◆

　　　　…アパートのそばの焼き鳥の屋台で飲む昇。五郎は道の反対側の電話ボックスに入り、ガラスを
　　　　割って潜む。丈二がやってくる。そこへ貞夫が。麻島のところへ喧嘩（でいり）の申し込みに行
　　　　くという（仁作は昔気質の親分なので）。第三波止場のB号倉庫で深夜の三時に、倉庫の両側か
　　　　ら攻め入って戦おうという算段らしい。丈二は五郎がいることに気付き、貞夫の話を聞いて、路
　　　　地裏へ連れ込み、殴り倒してタクシーで大津組へ送らせる。焼き鳥の屋台で話す昇と丈二。丈二
　　　　は昇を殺しに来たのだが、またどうやって助けようかとも考えていると告白する。そこへトラッ
　　　　クが通りかかり、五郎が撃つ。丈二は昇を押し転がし、反撃する。丈二は昇を殴り倒し、去って
　　　　行く。その頃、タクシーの中で目覚めた貞夫は、やはり“キャディラック”へ行く。敵に囲まれ
　　　　るが、ジーナが照明を落とし、その隙に逃げる貞夫。ジーナもこっそり銃を一挺奪う。麻島は大
　　　　津組が指定した時間より先に行き、待ち伏せするという。乗り気ではない金は残されることに。

　　　　…貞夫は節子の部屋を訪ね、お別れにキスさせてほしいと言う（吉永小百合さんのお話では、こ
　　　　のキスシーンはイヤだったとか聞きますが。笑）。事情を知った節子は圭子を窓の外から呼ぶ。
　　　　その圭子を物陰から眺める丈二（ここで“野郎泣くねえ”が流れますが、「野郎泣くねえ」とい
　　　　うセリフは入っていません）。

　　　　…“キャディラック”では一人、ピアノを流麗に弾く金。そこへ昇や警官隊が入ってくる。

　　　　金　　「プーシンチュウセイサンプエタァイジャクァタービビンタイ、プーチェントゥトゥシト
　　　　　　カーチューメンパイナン。カンペイ（乾杯）！」（さっぱり意味不明。正しい中国語なのか
　　　　　　も不明。笑）

　　　　金　　「大津さん、私ね、もうこの商売、イヤになったよ」

　　　　昇に麻島たちがどこへ行ったか問いただされるが、

　　　　金　　「大津さん、私、何も知らないよ。外国タバコ、いかがですか…」

　　　　と、差し出した手に手錠をはめられて、

　　　　金　　「これも運命ね…」

◆

　　　　…倉庫では待ち伏せをする麻島一味。五郎が戻ってくる。昇と丈二を殺したかと問われ、

　　　　五郎　「暗いしね、場所が悪いんで確かめるヒマがなかったが、手ごたえはあったよ。一発撃ち
　　　　　　　　返してきたが、俺には当らなかった。向こうの手元が、ああ狂うようじゃ、丈二は確か
　　　　　　　　に（タマを）食ってるぜ」

　　　　そこで靴音が倉庫内に響き渡る。丈二が二階部分（倉庫のグルリが回廊になっている）から現わ
　　　　れる。銃撃戦に。

　　　　丈二　「いくら撃ったって無駄だよ」

　　　　中の銃声を怪しんだ表の子分も入ってくる。ジーナも一緒に入ってくる。そこで五郎は、ジーナ
　　　　にイイところを見せようとでも言うのか、倉庫の真ん中に進み出る。

　　　　五郎　「丈二、顔を出せ。俺とおまえの二人っきりの勝負を着けよう」

　　　　と、丈二がひっかけのために出した的を撃つ五郎。

　　　　丈二　「そういう卑怯な腕は、おめえらしくて見事なもんだ」
　　　　五郎　「エッエッー（擬音）、今のは小手調べよ」
　　　　丈二　「上がってこい」
　　　　五郎　「行ってもイイが、上がるところを狙われちゃ弱えからな」
　　　　丈二　「俺はおめえほど卑怯じゃねえさ」
　　　　五郎　「じゃあ行くぜ」
　　　　麻島　「五郎、どうして登るんだ？」
　　　　五郎　「アッアッー（擬音）、任しときなよ」

　　　　階段を止めてあったロープを撃ち、階段を下ろす五郎。上へ登っていく。対峙する二人。

　　　　五郎　「自分で撃てる距離まで進んだ時が合図だぜ。おまえが先に撃ったって一向に構わない。
　　　　　　　　撃てたらな」
　　　　丈二　「OK、判った」
　　　　五郎　「タマを調べろよ。足りなかったら貸すぜ」（4発残っている）
　　　　丈二　「せっかくのご好意だが、充分過ぎるくらい残ってるよ」（実は1発しかない。このあた
　　　　　　　　りのセリフは後の『紅の拳銃』で使ってるんですね）
　　　　五郎　「じゃあ行くか」
　　　　丈二　「よし…」

　　　　歩み出す二人。銃撃。丈二が五郎の銃をハジき飛ばし、伏せる。もう一挺の銃を出して撃とうと
　　　　する五郎は、階下からジーナに撃たれてしまう。

　　　　五郎　「ジーナか…ジーナ、これで俺と別れられるな、間違いなくな…」

　　　　そう言って五郎はジーナに向けて三発撃つ。

　　　　五郎　「へへははは…間違いなくな…」

　　　　五郎は冊を乗り越えて、階下に落ち、ジーナのほうへ這って行こうとするが息絶える。そこへ大
　　　　津組がトラックに乗って、倉庫の扉を突き破って入ってくる（ここも日活特撮陣のミニチュアワ
　　　　ーク）。双方、大銃撃戦になるが、すぐに警官隊がやってくる…。

◆

　　　　…夜明けの港。昇と丈二がいる。良いことと悪いことを同時に行なったので、刑期はどのくらい
　　　　になるか、まだ判らないと言う昇。手錠をかけないのかと聞く丈二だが、

　　　　昇　　「君を逃げ出さないようにしっかり捕まえておくのは、僕の役じゃないね。じゃ、後でま
　　　　　　　　た…」

　　　　丈二が振り向くと圭子が立っている。丈二に駆け寄る圭子。抱擁する二人は海を見つめてたたず
　　　　む。終。

◆ ◆ ◆

　　　　…ここでも宍戸錠さんはまだまだユーモラスな人間には描かれておらず、また、主人公が去って
　　　　いかないという終わり方も、日活映画にしては珍しいかもしれませんね。

LAST UP DATE ◆ 2006年11月6日