火線地帯

使用している画像、その他の権利は全て、原権利者に帰属します。
映画・テレビドラマファン同志の楽しみのみを唯一の目的としたものであり、
利益を得たり、権利を侵害しようとするものではありません。

注）　他掲示板への転送など、画像の二次的な使用は厳禁いたします。

火線地帯

　　　　ここでは、いつも拙Webにいろいろ情報を提供してくださる、ツカさんの作品紹介を元に“地帯〔ラ
　　　　イン〕シリーズ”第5作（最終作）『火線地帯』の解説をしてみました。ツカさんの文章を90％使わ
　　　　せていただいています。

◆ ◆ ◆

　　　　新東宝1961年5月公開『火線地帯』
　　　　企画／佐川滉　監督／武部弘道　脚本／石井輝男、武部弘道　撮影／須藤登　音楽／真鍋理一郎
　　　　美術／小汲明　録音／根岸寿夫　照明／関川次郎
　　　　出演／吉田輝男、三原葉子、鳴門洋二、若宮隆二、大友純、国方伝、鳴瀬昌彦、宗方祐二、宮浩一、
　　　　　　　上林詢、佐々木孝子、ショーリ・岡本、ビリー・バンクス、池月正、三宅実、矢島啓司、
　　　　　　　正木正、大津昌也、津川登、笹田幸秀、鈴木信二、原聖二、築地博、村山京司、北川義朗、
　　　　　　　原田一雄、山岡正義、広瀬康治、高松政雄、岡竜弘、草間喜代四、滝てるみ、美船洋子、
　　　　　　　秋山れい子、田崎潤、天知茂、他

◆

　　　　新東宝マークに銃声音がかぶります。競馬場内が写され、タイトル、スタッフ・キャストがクレ
　　　　ジット。健次（鳴門洋二）が競馬場で予想屋のようなことをしていて、数人の客にレースの情報
　　　　を教えています。ちなみに彼には幸子〔サチコ〕（佐々木孝子）という妹がいて、彼女は映画館
　　　　でモギリの仕事をしています。そこへ伸一（吉田輝男）が現われる。

　　　　伸一「おい、この情報、間違いないだろうな？」
　　　　健次「信用出来なかったら、無理にオススメしているわけじゃないんですから、ヤメといてくだ
　　　　　　　さい。あたしだってね、梶川（ヤクザの組）のところの若いもんです。皆さんに損をかけ
　　　　　　　るような事したら、この縄張〔シマ〕、歩けませんからね」

　　　　そこへ黒い帽子に黒眼鏡、黒背広という黒づくめの恰好の男・黒岩（天知茂）が現われ、お金を
　　　　渡します。

　　　　黒岩「おっ、兄さん、任そう。これだけ買ってくれ」
　　　　健次「はい、黒背広の旦那、5000円お預かり！」

　　　　ところが健次と伸一は友人同士（つまりサクラの客）で、しかも梶川組の者というのも嘘。競馬
　　　　場の帰りに梶川組の者たちに追われ、逃げる途中、伸一は銃を発砲、逃げ切ります。「今夜はハ
　　　　デに行こうか」と、健次と伸一が喜びながら歩いていると、目の前に先般の黒岩が。二人は驚き、
　　　　健次は無言のままお金を返します。黒岩は、一言言って去っていきます。

　　　　黒岩「こんなケチな事してちゃ、いつまでたっても、うだつは上がらんぜ。弱い者イジメなんか
　　　　　　　しねえで、もっと、デケえ所で勝負するんだなあ」

　　　　街へ戻った二人は、また梶川組に追われます。そこに買い物帰りのゆみ（三原葉子）が登場しま
　　　　す。ゆみが車に乗り、走り出すが、中には健次と伸一が乗っています。驚いたゆみに、追われて
　　　　いて隠れるつもりで乗ったという事情を説明する二人。車は海へ行き、結局、ドライブになって
　　　　しまいます。はしゃぐ三人。

◆

　　　　…場所は変わり、ゆみが二人を連れて行ったのは、キャバレー“ファンタジア”。黒人歌手（ビ
　　　　リー・バンクス）が歌い、それに合わせて健次と伸一は踊っています。二人の様子を見た店の者
　　　　は二人を事務所に連れて行きます。事務所の中でまた伸一は拳銃を撃ちます。

　　　　ゆみ「いい腕じゃないの。だけど滅多にハジキなんか出すものじゃないわ」
　　　　伸一「こいつらが難癖をつけるからさ。あんたが連れてきてくれた所にしちゃ、待遇が良すぎる
　　　　　　　ぜ」

　　　　この店の経営者で重宗商事の社長である重森〔“シゲモリ”の漢字表記が不確定ですが、仮に“
　　　　重森”とします〕（田崎潤）が現れ、伸一の威勢がイイのを見て気に入ります。重宗商事に入ら
　　　　ないかと持ちかけますが、伸一は「自分の仕事を見てからにしてほしい」と言う。実はゆみは重
　　　　森の愛人。

◆

　　　　…場面変わって、黒岩が客を相手に拳銃の競り売りを行なっています。外では健次、伸一と重宗
　　　　商事の者が車の中で待っています。伸一の仕事は拳銃で車のタイヤを撃つこと。競りの終わった
　　　　車を追います。しかし追われた車は勢いで橋桁にぶつかり、伸一は発砲する事なく、拳銃を奪う
　　　　事に成功。健次と伸一はこの仕事の荷物の中身は知りません。重宗商事の者は、二人にはお金を
　　　　渡し、帰らせてしまいます。無事、拳銃を奪った重森の部下はそれを持って行き、喜んでいると、
　　　　そこへ電話が。それは、梶川組からブツを奪ったのを見ていたと言う内容の電話。電話の相手は
　　　　名前を名乗らない。その電話の相手は明日の朝10時に重宗商事に来ると言う。電話の相手は伸
　　　　一ではないかという話になって、彼を消す案が出ますが、重森は「明日になってからでも遅くな
　　　　い」と言う。

◆

　　　　…朝。事務所に向かう伸一が途中でゆみに誘われ、彼女の車に乗る。彼女の口から「昨夜の感謝
　　　　の印にたっぷりハジキの弾丸が…」と聞かされ、驚く伸一。ところが、重森の所へ来たのは黒岩。
　　　　重森が昨夜の事件のことは知らないと言うと、

　　　　黒岩「私がある時間までにここを出ないと、昨日の事件を梶川組にタレ込む仕掛けになってます
　　　　　　　んでね」
　　　　重森「いいだろう、全然覚えのない事だよ」
　　　　黒岩「そうですか、じゃ、昨日の一件を見ていた生き証人を梶川組に走らせましょう」
　　　　重森「なにィ」

　　　　重森は黒岩に「いくら欲しいんだ」と言い、商談は成立。ゆみは伸一に全てを話し、隠れていた
　　　　方がイイのではと助言する。しかし伸一は電話の相手を捕まえて、事の次第を吐かすと言う。重
　　　　森の元へ梶川組の組長・梶川（大友純）がやってくる。梶川は昨夜の事故の件を重森に話すが、
　　　　知らないという重森。梶川はマッチ箱を取り出し（このマッチ箱は重森のキャバレーのもの）、
　　　　「昨日の事故現場に落ちていた」と言い出す。重森は、伸一の名前を出し、伸一を犯人に仕立て
　　　　た上に、伸一を梶川に渡す約束をする。伸一を探す重森の部下。伸一が逃げるために乗ったバス
　　　　に黒岩も乗っていて、二人は昨夜の事などを話します。黒岩は伸一に、「二人で組まないか」と
　　　　持ちかけます。二人は尾行からうまく逃げますが、重宗商事では二人を消す話が出る。「儲けた
　　　　お金で南米へ行くのが夢だ」と、黒岩から打ち明けられる伸一。黒岩は伸一を誘いますが、伸一
　　　　は断る。

◆

　　　　その頃、健次が重森の部下に捕まってしまう。ゆみは重森の愛人をヤメると言い出す（ゆみと伸
　　　　一はすでにイイ仲になっているので）。しかし幸子は伸一が好きであった。ゆみは伸一に拳銃の
　　　　ある場所を連絡する。伸一と黒岩は拳銃の場所へ行くが、中では健次が重宗商事の部下から「伸
　　　　一の場所はどこか」とたずねられ、殴られている。そこへ伸一が拳銃を持ち、入って行く。健次
　　　　を助けた伸一は彼と話し合う。“100丁のハジキ”を要求。重森の部下・中本（成瀬昌彦）は伸
　　　　一に「ハジキを役に立てたい」と。「殺しだな」と伸一。消す相手は重森社長で、中本は重宗商
　　　　事を乗っ取ると言う。成功したら“100丁のハジキ”が伸一のものに。ゆみは伸一に「仕事は
　　　　やらないで」と止める。中本たちはゆみと伸一が逢った事をつきとめ、それを元に中本はゆみに
　　　　社長を午後12時に倉庫へ来させるように依頼する。そして中本は、ゆみに重森から離れること
　　　　を示唆し、その後の面倒は自分がみると言う。苦悩するゆみ。

　　　　ゆみ「誰からも束縛されず、伸一と一緒にいたい。みんな死んでしまえばイイんだ…」

◆

　　　　ゆみは重森に中本の事を全て話す。倉庫で撃ち殺される中本。ゆみは重森に「何でもするから伸
　　　　一を殺さないで」と懇願する。倉庫に黒岩と伸一が来る。銃撃戦に。「伸一さん、逃げて！」と
　　　　言うゆみは、伸一へ向かって走る途中、撃たれる。「ゆみを撃つな」と言う重森。伸一はゆみを
　　　　連れて倉庫から外へ。外でも銃撃戦に。そんな中、機関銃を持った梶川組が現れ、重宗商事の者重
　　　　は全員撃たれ、森も死にます（Web@作者／このあたり、いかにも新東宝作品っぽいですよね。
　　　　あっけなく終わらせてしまう。笑）。ゆみは虫の息。梶川組がなぜ来たのかを不思議がる黒岩。

　　　　ゆみ「あたしが…あたしが梶川組へ電話したのよ。ブツを横取りしたの、重森だって。みんなや
　　　　　　　られてしまえばイイと思ったのよ。あんたと一緒に行くには、それしかないと思った。で
　　　　　　　も、ダメだった。伸一さん、抱いて。強く抱いて。寒い、寒いわ…」
　　　　伸一「ゆみ！、ゆみ！」

　　　　息絶えるゆみ。パトカーのサイレンの音。ゆみの遺体を置いて、港へ走る黒岩と伸一。しかし乗
　　　　る予定だった船は出航したばかり。港にいる黒岩と伸一の元へ健次と幸子が来る。幸子が健次た
　　　　ちのところへ走って行って“完”の文字。

◆

　　　　ここでツカさんのコメント。
　　　　●「本編からは天知茂さんの役名は判りません。“黒背広の旦那”としか言われていませんし、
　　　　　　名前を聞かれるシーンがありますが名乗りません」
　　　　　…しかしある文献には“黒岩”と書かれてありましたので、ここでは黒岩名義としました。

　　　　●「“地帯〔ライン〕シリーズ”なのですが“火線”の意味が私は判りません。過去の“地帯シ
　　　　　　リーズ”とは別格に思います」
　　　　　「“地帯シリーズ”の特徴の外での撮影はあります。ある意味では制作費が安くあがると思い
　　　　　　ますが、逆にリアルな演出ですね」
　　　　　…なるほど。

　　　　●「キャステイングの中に私の好きな万里昌代さん、星輝美（後にてるみ？）さんもいれば最高
　　　　　　なのですが」。
　　　　　…これはWeb＠作者も全く同感です！（笑）。

　　　　●「大友純さんはいいキャラです（『東海道四谷怪談』の宅悦は最高です）。田崎潤さんは悪役
　　　　　　にしては悪役らしくありません（東宝映画『海底軍艦』の役柄とか同『妖精ゴラス』の役柄
　　　　　　の方がいいですね）」
　　　　　…田崎潤さんは、極悪人には見えませんよね。

　　　　●「三原葉子さんのゆみはイイです…というか、三原さんの存在がイイです」
　　　　　…ええ、これも全く同感です（笑）。

◆ ◆ ◆

　　　　Web＠作者は未見の作品なのですが、ツカさんの解説を楽しく読んで、見たような気になりま
　　　　した（笑）。これからも作品情報をお願いしたいと思います。

LAST UP DATE ◆ 2005年9月6日